西條八束先生へ

先生の3度目の命日に当たる10月9日、第14回手賀沼流域フォーラム全体会「よみがえれ ふるさとの沼・川・里」に招かれて行ってきました。流域7市の市民団体と自治体によって企画されたもので、協働の広がりが感じられました。
先生の時代、宍道湖淡水化問題、長良川河口堰問題など、その工事が行われれば環境が大きく変わることは明らかでした。また行政対市民(住民)という対立構造になっていました。その中で先生は、長良川河口堰問題に関して初めて置かれた第三者調停委員会である円卓会議の座長を務められ、また事後モニタリングを公開させるという、活気的な転換を実現させました。それまでは建設省のデータを入手することがどれほど困難であったか、今しか知らない方には想像もつかないような時代でした。先生はそのように、対立ではなく、共に考える基盤を広げようとされていました。今でも環境問題を対立の構図に持ち込む向きが多いことは、先生のご努力を思うと残念でなりません。
幸い、手賀沼では共に考えていこうとする空気が、私がこれまでに関わった他の水域よりも濃いような気がします。既に30年近く研究してきた宍道湖・中海ほどは科学的な把握ができないかもしれませんが、定年になるまでの10〜15年、宍道湖で多毛類から始めたように、できる対象から探って行こうと思います。
この1年の陸水研のニュースとして、今年の陸水学会でもまた、陸水研の修士の学生が優秀ポスター賞を受賞しました。博士やポスドクも対象にして3名しか選ばれない賞に、2年連続陸水研の修士学生の研究が選ばれたことは、東大地理が受け継いできた陸水学の考え方が評価されたものと受け止めています。修士は3人、全員就職できました。二人目の博士が誕生しました。来年度も何人か、修士課程、博士課程に進学します。
これらの学生も含めて、天国から見守っていてください。