廃プラスチックリサイクル処理施設とシックハウス症候群類似の症状の集団発生との因果関係を巡って争われていた寝屋川廃プラ裁判、大阪高裁は1月25日、1審判決を支持し控訴棄却の判決を行いました。1審判決は「住民が訴える健康障害は、心因性、加齢のせい」とし、「公共性、公益性があり、忍従すべき」としていました。その判決が正しかったとするものです。
判決では、環境基準や指針値のある規制対象物質11種類を大阪府・寝屋川市が調べた結果、すべて環境基準値以下だったので廃プラ工場による健康被害は考えられないとしています。しかし調査した規制対象11物質は、大気汚染化学物質の一部に過ぎません。現在規制対象になっている化学物質だけが健康悪化の原因とする科学的根拠はありません。過去に起こった公害病、例えばイタイイタイ病や水俣病でも、発生時には原因物質は分かりませんでした。
私が所属する環境系の柳沢先生は、廃プラ施設周辺の空気を分析し、一般の空気とは異なる多くの未知物質を検出しました。その中には皮膚粘膜刺激症状の原因物質であるアルデヒド類や、脂肪族炭化水素類が多いことも分かりました。柳沢先生は、未知の化学物質は原則有罪と考えることが公害の歴史の教訓であると指摘しています。
寝屋川の症状とよく似た症状である杉並病について、公害等調整委員会は、「本件は,特定できない化学物質が健康被害の原因であると主張されたケースである。ところで,この化学物質の数は2千数百万にも達し,その圧倒的多数の物質については,毒性をはじめとする特性は未知の状態にあるといわれている。このような状況のもとにおいて,健康被害が特定の化学物質によるとの主張,立証を厳格に求めるとすれば,それは不可能を強いることになるといわざるを得ない。本裁定は,原因物質の特定ができないケースにおいても因果関係を肯定することができる場合があるとしたものである」とし、物質を特定することなく、処理施設から排出される化学物質が病気の原因であるとの判断を示しました。
ペットボトルのリサイクルなど、廃プラ処理施設は「環境にやさしい」というイメージのもと、今後も増加すると思われます。寝屋川で「問題無い」として操業が続くことになれば、杉並、寝屋川と住宅地に隣接して処理施設を作ることが正当化され、次々に不調を訴える人が現れても、「公共性、公益性があり、忍従すべき」と押し切られる流れができてしまうかもしれません。
一度失われた健康は、完全に元に戻すことはとても困難です。みなさまの地域でもできてしまう前に、身近に起こりえる問題として考えていただければと思います。