分類学者の減少が生む問題

地球環境研究センターニュースVol.21, No.10生物多様性をテーマとしたインタビュー記事で、分類学の現状に関する見解が紹介されていました。私は高校では生物部に所属していて、顧問の先生は後鰓類(ウミウシの仲間)の世界的な分類学者でした。環境問題の解決には分類学が不可欠だと、この頃に先生から教わる中で考えるようになりました。
今、日本の分類学は危機に瀕していると思っています。インタビュー記事も同様の見解でした。該当部をペーストします。
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分類学者の減少が生む問題
亀山:生物学というと、どちらかというとミクロな方向性を持った学問が主流のような印象ですが、生態学分類学のような、生物多様性と関りが深中静:分類学は昭和初期までは盛んでしたが、現在は少なくなりました。分類学生物多様性研究の基礎としても必要な部分ではありますが、一般の人に注目される大発見を目指すような脚光を浴びる分野、研究者として評価される分野にどんどん人がいってしまい、分類学を志す人は減っています。学生はほとんど分類学にはいきません。
亀山:それは知りませんでした。
中静:分類学のスキルをもった人が減っていることで問題が起きています。たとえばある土地を開発する際、環境アセスメントのために植物をリストアップしたいとき、今ならまだ地方に分類学者がたくさんいて可能ですが、20 〜 30 年後にはいなくなり、大変になるだろうと言われています。途上国はさらに深刻です。途上国では学問が育つ前に分類学に人材がいかない状態になっています。
いくら生き物を保全しましょうといっても、どんな生き物がいるのかリストアップすらできない状態になりつつあります。
亀山:難しいですね。学問にも流行のようなものがあります。
中静:すべての学問に共通していますが、立ち上がりのときには注目され、天井が見えてくるとだんだんと人が減っていき、新しい分野に流れてしまいます。分類学では、DNA 技術が発展し、形を見なくてもDNA の組織から生物を同定できる技術が進みつつあります。それは本当にいいことなのか疑問です。植物が生長していく様子、生態系のなかでの役割などを認識しないで、コードやデータだけで機能を解明するのは、また何か別の問題が起きてくるように思います。