アサザ植栽事業による霞ヶ浦の自然環境攪乱

写真は麻生のアサザ群落にハスが入り込んでいる様子です。
ここはもともと自然群落がずっとあったので保全対策などする必要はなかったと思うのですが、他の地区同様、沖合に消波堤を造りました。これによりハスが定着する「泥がたまりやすい環境」ができました。手賀沼や伊豆沼でハスは生態系に甚大な悪影響を及ぼしています。霞ヶ浦も10年以内に、同様な環境劣化が生じると予測されます。

霞ヶ浦ではかつてアサザがどこに咲いていたか聞き取ったところ、湖の中ではなく、河口など、「泥がたまりにくいので砂が卓越する」、流れがある所でした。アサザ基金のホームページには「アサザが砂をためる」と事実誤認を明記してあります。そこに砂があるということは、「流れがあるので細かい泥が流れて、砂だけが残りやすい」、ということです。「砂だけをためる」ということは決してありません。「ためる」ときには泥もたまります。消波堤を造ると、泥もためることなのです。麻生、和田岬など、アサザが現在自生しているところは、泥がたまりにくいところです。ですから本当にアサザ保全したいのであれば、流れがある環境、アサザが本来生息していた環境を復元することであって、消波堤を造って植栽することでは決してないのです。

アサザ基金は「アサザを巡る生態系は解明されていないことが多い」と書いていますが、それは自然破壊を推進するいいわけにはなりません。アサザ基金が推進してきたことが霞ヶ浦の湖岸生態系を破壊することは、教科書的な基礎知識からも自明のことでした。下記は浅枝隆著「生態系の環境」104頁にある文章です。非常に残念なことに、明らかに自然破壊につながることをやってしまったのが、消波堤とアサザ植栽をセットにした事業でした。

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広い湖沼では、湖の形状や風向きとの関係によって波浪が高くなる場所も多く、かつては湖岸に砂浜が広がっていた場所も多い。そのため、波浪を抑えて、湖岸に植生を生やすことが、常に原風景の再生につながるとは限らない。砂質土壌は水質改善効果も高く、また、土壌中の酸素濃度が高い。ところが、生産性の高い抽水植物や浮葉植物群落が形成されると、日射を遮るだけでなく、微細な浮遊物や有機物を堆積させる。そのため、砂質の湖岸をシルトや粘土質に変化させ、底質を貧酸素化する。