霞ヶ浦の自然再生を目的とした消波施設の功罪

霞ヶ浦の調査に行ってきました。
霞ヶ浦根田地区。こちら側は沖合に消波施設が無いため、波浪によって微細泥が流され、砂質底になっています。植栽を繰り返さなくても、アサザ群落が拡大しています。アサザは種子がなくても切れ藻が流れ着いて定着することができます。関西の水草に詳しい方によりますと、他の水草同様、環境があっているとかなりの速度で拡大します。

浮葉植物は沈水植物より富栄養化に強く、ヒシなどはアオコと平気で共存します。アサザも同様で、ここのアサザ群落でもアオコが発生していますが、アサザは元気に育っています。

これは、同じ根田地区の、アサザ基金が植栽を繰り返した側の堆積物です。消波施設のために波が弱まり、波浪時にも植物遺骸が流出できずにたまり続け、そのために底泥が強度に還元的になってていることが分かります。これではいくらアサザを植えても定着しません。

水環境に関する科学的な知見の基本を知っていれば、消波施設を造ればこうなることは予測できるのです。しかるに今なお「粗朶消波堤を設置します。底土の流出を防ぐことにより、植物の定着を助ける働きが生まれます。」と説明している某団体には、呆れるばかりです。底土が流れなければ、粘土質や植物遺骸も流れ出さずにたまってしまうのは、当たり前ではありませんか。
http://www.kasumigaura.net/asaza/03activity/01lake/01sizen/index.html
こちら側の湖岸を歩くと、積もった植物遺骸で湖底がクッションのようになっていました。今から消波施設を撤去しても、元の砂底になるまでには腐った植物遺骸が流出するなど、問題を起こしそうです。撤去に当たっては、慎重に対策を立てる必要があると思います。
全く。何てとんでもない環境破壊をしてくれたことでしょう。