映画「沈黙の春を生きて」

ベトナム戦争で使われた枯れ葉剤。それはベトナムだけでなく、従軍した米軍兵士の体、そして彼らの子供達をもむしばむものでした。
岩波ホールで上映中(21日まで)の「沈黙の春を生きて」は、その枯れ葉剤がベトナムアメリカの人々に今なお与えている不幸をえぐりだしています。
同じ事が私たちにも及んでいる可能性は、皆無といえるでしょうか。
例えば枯れ葉剤に使われていたのと同じ2,4-Dが、1950年代半ばの日本で除草剤として全国的に使われていました。霞ヶ浦を含め、平野の湖沼で一斉に沈水植物が消えていったのが、この頃です。私は原因は2,4-Dもしくはその不純物だと考えています(「里湖モク採り物語ー50年前の水面下の世界」に知見をまとめました)。。
除草剤や殺虫剤は日本の湖沼生態系を変えただけでなく、私たちの健康そのものにも何らかの影響を与えている可能性は否定できないと思います。実際,除草剤のCNPは、疫学調査の結果から胆のうがんを引き起こすことが疑われて、1994 年に製造・販売が中止されました。除草剤PCPとCNPにダイオキシンが不純物として含まれていたことが分かったのは、その後になってからでした。
下記は「沈黙の春を生きて」制作会社のホームページからです。
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枯葉剤について調べている中で、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』が、ケネディー大統領が枯葉剤散布を認めた1961年にほぼ書き上げられていたこと、また大統領が、この本が出版されるやいなや、アメリカでの農薬の使用を危惧し、科学者の委員会を設置したことを知りました。ところが、同時にベトナムでの枯葉剤の散布はどんどん増えていったのです。この符号に私は偶然ではないものを感じ、その理由を突き止めたいと思いました。アメリカでのマーケットを失った農薬製造会社が、アジアでの軍事的使用を思いついたのではないか、と。その証拠は見つかりませんでしたが、調べていくうちに『沈黙の春』と枯葉剤によってもたらされた環境と人間の破壊がまさにレイチェル・カーソンが50年前に予言していたものだと気づきました。
この50年の間に私たちは何を学んだのだろう。
50年前の間違いが今このような悲劇を生んでいるということは、今、私たちが気づかずにしていることで50年後の世代に大変な厄災を残すことになることがあるのではないか、ということを訴えたくて『沈黙の春を生きて』という題名にしました。