治水・利水に環境が加わった新河川法。それは長良川河口堰問題がきっかけでした。
長良川河口堰問題に真摯に取り組み、国のデータを公開するのが当たり前という今を開いたのが、西條先生です。
先生は何より自然科学に基づいた合理的な議論が、国・住民双方に不可欠と考え、データ公開と対話のために、「なぜ建設省に荷担する?」などの誹謗中傷もある中、建設省の委員も務めて、今の状況を創出されました。
先生の命日までに校正を終えたかった本。それもできずに、今、私は、当時先生が戦われたような非合理に時間をとられています。見過ごしてはいけない。それが科学者の規範だと、先生が教えてくれましたから。
先生が受けたような誹謗中傷が当然あります。何でこんな当たり前のことが科学者なのに分からないのかと、腹立たしいこともしばしばです。先生もきっと、こんなことばかりだったのだろうと思います。先生が亡くなって、先生がいつも泥をかぶっていてくださったことが分かります。
下の図は、私の指導教員だったK先生が海洋学会誌に書いた弔辞です。K先生も西條先生を師と仰いでいました。今、私がやっていることはかなり少数派なのですが、私が死ぬ頃にはそれが規範になると思います。東京大学地理学教室の陸水学は、吉村信吉先生以来、水環境に取り組む自然科学の規範を創出する場なのだと思っています。
年度中には、先生が気にかけて下さっていた「貧酸素水塊」を奥様にお送りできると思います。もう少し待って下さい。
補足:
私がこれまで関わってきた水環境改変事例は、宍道湖淡水化、長良川河口堰、米子湾浚渫、中海本庄工区干拓です。これまで関わって来た問題よりさらに深刻に環境破壊につながるのがアサザプロジェクトのやり方なので、このブログで情報発信しています。
市民団体だからとか、自然再生運動だからなどの理由で、思考停止してはならないと思います。それぞれの立場から、考えて下さい。ひとつの見方だけで判断しないで下さい。逆に、私の見方だけを信じる必要もありません。ネット情報だけでなく、現場を見て合理的に考えるところから、環境問題解決の道筋が見えてくると思います。