無免許でテキーラ6杯飲んでひき逃げしても「過失」

フジテレビ系列のスーパーニュースの特集で、遺族による、表記悪質轢き逃げ事件をの罪状を危険運転致死罪への変更を求める署名活動が報道されました。本日中なら下記で番組をダウンロードできると思います。
http://www.fnn-news.com/news/video/wmv/sn2012020301_hd_300.asx
以下、内容です。

愛知・名古屋市で19歳の大学生がひき逃げされ、ブラジル国籍の男が逮捕された事件で、適用される罪名をめぐって、遺族が3日、およそ2万9,000人分もの署名を提出した。

名古屋市で会社を経営している真野 哲さん(50)。

街頭で「この日本の法律、中身を問う時期が、今まさに、わたしたちの大切な息子の命を懸けて、公判中ではございますが、裁判に立ち向かいたいと思います」と訴える真野さんの首にかけられているのは、長男・貴仁さん(19)の写真だった。

真野さんは2011年10月、飲酒運転によるひき逃げ事件で、当時19歳だった貴仁さんを亡くした。

真野さんは「せっかく大学生になって、これから楽しい4年間が始まる。将来、やりたい仕事もいろいろあっただろうに、友人・知人と、楽しい人生が、明るい未来があったのであろう」と語った。

3人兄弟の長男だった貴仁さん。大学に入学し、毎日が充実していたという。

2011年10月、自転車で横断歩道を渡ろうとしていた貴仁さんを車ではねて逃走したのは、ブラジル国籍のマルコス・アウレリオ・ベルトン被告(47)。

マルコス被告が運転していた車は、前輪のタイヤは完全にパンクし、フロントガラスも大きく破損していて、事故の衝撃の大きさを物語っていた。

しかし、マルコス被告は、これだけの事故を起こしながら、貴仁さんを救護することなく、そのまま逃走した。事故の様子を知る人は「パンパン! って音がしたというふうに(妻に)聞いて、様子を見に来たら、散乱していて、(貴仁さんが)倒れていた」と語った。

その後、マルコス被告は、およそ2km先の路上で動かなくなった車の中にいたところを逮捕された。その後の調べで、悪質な運転の実態が明らかになった。

真野さんは、名古屋市北区の横断歩道を渡ろうとした瞬間、飲酒運転をしていたマルコス被告の車にはねられた。さらに、マルコス被告は一方通行を逆走していた。また、マルコス被告は事故の数時間前、少なくともテキーラ6杯、生ビール3杯を飲んでいて、貴仁さんをはねる直前に別の車と衝突事故を起こしていた。さらに、マルコス被告は、これまで一度も運転免許を取ったことがなかったことも判明した。当然、保険にも入っておらず、車は無車検だった。

真野さんは「母国でも免許を持ったことのない外国人が、お酒を飲んで、一方通行を逆走して、無車検、無保険。そんな状況の中で人をはねて、さらに逃げたと。それでも、日本の法律は、自動車運転過失致死」と語った。真野さんらは、マルコス被告に対して、最高刑が懲役20年の危険運転致死罪での起訴を望んでいた。

しかし、検察側が口にした罪名は、その期待を大きく裏切るものだった。自動車運転過失致死の最高刑は懲役7年。

なぜ、これほどまでに悪質な運転をしていながら、危険運転致死罪で起訴できなかったのか。

初動捜査を行った愛知県警北警察署は、FNNの取材に対して、「極めて悪質な事件であるため、発生直後から危険運転致死罪を視野に入れ、捜査を行ったが、事件の内容が、同罪の要件に該当しないと判断された」とコメント。

そして検察も、遺族に「事故後に検出した呼気のアルコール濃度が少なく、事故直前まで信号無視をしている形跡もなかったことから、危険運転致死罪が適用できなかった」と説明したという。

危険運転致死傷罪が成立するには、「酔っぱらい運転」、「スピードの出しすぎ」、「信号無視」などが必要。さらに、これら3つの点についても条件があり、信号無視については赤信号を無視した場合でなければならず、見落としなどの過失の場合は適用されない。

法の適用には極めて高いハードルがあった。これに対して遺族は、危険運転致死罪への変更を求める署名活動を始めた。

一緒に署名活動をする井上保孝・郁美さん夫婦は1999年、東名高速道路で飲酒運転のトラックに追突され、幼い2人の娘を奪われた。2人の事故後の署名活動などが、危険運転致死傷罪が新設される、大きなきっかけとなった。
郁美さんは「今回の、こんな悪質な事件を危険運転致死罪を適用しないまま、もし裁判が終わってしまったら、本当に日本の社会の中で、この12年、積み重ねてきたものを、また0に戻してしまうような、あしき判例が残ってしまうんじゃないかと、わたしたちはすごく心配しています」と語った。

真野さんは「わたしたちは、大事な息子を亡くして、将来も未来も夢も全部奪われたんですよ。それに対して、これもあれもあれも、全部加害者のために擁護するためのような、そういう仕組みというのは、絶対におかしいと思うんですね」と語った。

妻・志奈さんは「(夫の言うことに)わたしも同感で、誰のための法律なんですかって、本当にまさしく、今の段階で、加害者のための法律じゃないですかと、わたしたちは思っています」と語った。

検察から説明を受けた遺族によると、マルコス被告は、貴仁さんひき逃げ事件の前に起こした衝突事故後、ヘッドライトを消して逃走したという。この行為は、「お酒を飲んでいて、事故を起こしてまずいとわかるのは、酩酊(めいてい)状態ではない」と判断されたという。