ニセ科学? −EM菌、アサザによる水質浄化

今日は水環境学会のシンポジウム「水に関する情報発信・啓発の課題とその解決策」に参加しました。
ニセ科学問題に詳しい菊池誠先生からは「科学とニセ科学:特に水をめぐって」とのタイトルでご講演いただきました。水環境学会会員で自治体職員の少なからずの方にとって悩みの種になっているのがEM団子による川の水質浄化ですが、これのニセ科学性について説明いただきました。EM菌については、ご高著「もうダマされないための科学講義」でも取り上げられているので、ご参考になると思います。
寿楽浩太先生からは「科学技術に関する社会的意思決定の変化と専門家に求められるもの」とのタイトルで原発問題などを例に、トランス・サイエンスの領域が増える中で、専門家(科学者)は意志決定における役割をどう変えればよいかについてご提案いただきました。
主催者側からは山田一裕先生が「科学的思考にもとづく水環境保全活動を阻む教育的課題」とのタイトルで、EM菌が学校教育で用いられている内容において、子供達の合理的思考を阻害している現状を報告いただきました。
私は「アサザが水質浄化するとの誤解の蔓延−義務教育副読本の記載から」とのタイトルで、アサザ植栽を進めてきた側の主張の何が科学的に間違っていたのか、書籍「よみがえれアサザ咲く水辺」や、NPO法人アサザ基金が配布していたプリントを示して経緯を報告しました。
総合討論では、ではどうすればよいかについて発言が相次ぎました。私は「自然再生事業は順応的管理を原則とするなど、不確実な仮定のもとに進められている。そのような不確実なことを初等教育で教えて、後で間違っていたことが分かっても、子供達に修正を伝える手段はないことから、自然再生事業には原則として子供達を参加させてはならない」と提案しました。
菊池先生は「このような議論では遠大な提案で終わることが多い」と指摘され、できるところからやっていく、例えば朝日新聞がEM菌を使った学校教育について記事を出したが(7月3日付記事参照)、こういう記事に対して水環境学会会員が積極的にコメントしてほしい、と提案されていました。同感です。