佐藤優「読書の技法」

陸水研のメンバーは、「ここに進学する為にどういう勉強をすればよいですか」との質問に「高校の参考書レベルはマスターしておくこと。物理・化学・生物・地学だけでなく、社会との関係も考える上で、できれば日本史・世界史も。」と言われた記憶があるかと思います。また、本や論文は丁寧に読めばよいというものではなくて、とにかくざっと目を通すことが大切。それをまとめて自分の頭で新たな概念を構築するのが目的なんだからと、オリエンテーションで言われていると思います。
本書には上記と通じる点がいくつかありました。第5章「教科書と学習参考書を使いこなす」と、第1〜3章の読み方に関する記載がヒントになると思います。特に、第2章の「基本書をどう読みこなすか」は、陸水研に来て卒論とは全く異なる分野に挑戦する学生さんには役立ちそうです。
うちの研究室では本をたくさん読む必要はありませんが、論文は修論を書き始めるまでに100本以上は読んでおいてほしいところです。本書で書かれている「本」の読み方を、論文を読む参考にしてください。「本は汚く読む」にあるように、マークしたり折ったりなどしておくと、修論をまとめるときに気になっていたところを素早く見つけることができます。本書では読書を新聞にたとえていました。新聞の紙面を全て熟読することはあまりないでしょう。見出しを見て、必要そうなところだけざっと読みます。本や論文もそういう読み方を心がけて下さい(本書を読んで良かったと一番収穫になったのは、このたとえです)。
私が修論を書いていた頃はカードを使って文献整理をしていましたが、今はPCで管理できます。最近、OBのT君から教えてもらったPapersというソフトは、感想を書き込めるので便利そうです。
本書の著者は私と同い年ですが、文系と理系の差か、PCを読書にどういかすかについては全く記載がなく、読書メモについても「PCにいれておくと消えるからノートがよい」との趣旨の記載がありました。私は脳脊髄液減少症のおかげで物忘れが激しく、PCを脳の分身として利用しなければ仕事ができない状況でした。ワードやPDFでメモを残しておけば、キーワードで関連する文書が検索できます。脳は無意識に、こういうネットワークを作っていると思います。ノートではこんな芸当はできません。著者が指摘する「消えてしまう」対策については、自宅デスクトップを基幹として、ノートPC、職場デスクトップをBunBuckupというソフトで毎日同期させています。ですので、自宅が火事になってデスクトップとノートPCがやられても、職場のデスクトップを使って仕事を続けることができます。またウィルスに感染したときの為に、職場に外付けHDをおいていて、半年に1回、バックアップを残しています。最悪の場合でも、半年前までの記録は回収することができます。
一般向けの読書・読書から得られたアウトプットの整理法は多くの本で紹介されていますが、理系向けは限られているように感じています。陸水研の学生さん向けにマニュアル的な本を作ってみようかと思いました。