「ウナギの博物誌 ―謎多き生物の生態から文化まで」

私が所属する松江のNPO法人では、かなり以前から汽水域こそウナギの重要な生息場所と考えていました。というのは、大阪では「出雲屋」という名のウナギ屋が多く、その理由として上方で売られるウナギは宍道湖・中海で取れたもので、天然物としては最もおいしいとされていたとの記載が残っているからです。
最近になって、ウナギの専門家の中から汽水域に着目した研究を行っている方がでてきました。たとえば下記の本の第四章「汽水域に生息するウナギと人」を読んでいただくと、汽水域、特に湖沼で汽水になっているところこそ、ウナギにとって非常に重要であることがわかると思います。
あいにく水産庁の研究所では、内水面漁業を担当している部署は河川しか研究していません(なのでセンターも河川の上流部にあります)。そもそも内水面漁業の漁獲内訳のうち、サケ・マスを除けが圧倒的多数が湖沼から採れているのです。海での漁業がサンマにみられるように近隣諸国の台頭で減産を強いられる今こそ、汽水域を含む湖沼を対象にした研究を進めるべきだと思います。

ウナギの博物誌―謎多き生物の生態から文化まで

ウナギの博物誌―謎多き生物の生態から文化まで