琵琶湖での検討結果は平野部の富栄養化湖沼には適用できない

世界湖沼会議のワークショップ「日本海側汽水域の現状と生態系機能の再生」で宍道湖の発表をされた方は、類型指定されたときの審議会答申を紹介し、当時はまだ淡水化するかもしれなかったから、こんなわけのわからない表現になったのではないかと指摘していました。下記写真の「利用目的」が審議会答申です。

「水産:シジミ、ワカサギ、フナ、シラウオ、エビ等は勿論、アユ等の貧栄養湖型の魚類の生息可能な水質を保全すべきである。」
「貧栄養『湖』型の魚類」としているからには、海ではなく湖と河川を往復する鮎がいることを前提とした表現と解釈され、そういった鮎がいる自然湖沼は私が知る限り琵琶湖だけです。宍道湖に富栄養水域に住む魚と貧栄養水域に住む魚の両方を生息させるという表現は問題大ですが、琵琶湖が貧栄養であることを認めている点では、今の湖沼環境行政担当者よりは琵琶湖の位置づけはまともだと思いました。
琵琶湖法ができてから、私が中央環境審議会で「これは他の指定湖沼と差別化するもので問題が大きい」と指摘した通りになっているように思います。たとえば底層DOについても、琵琶湖での検討を踏まえた上でとされていますが、下図のように、琵琶湖は富栄養化が進んでいるとされる南湖でさえ、山の上の方にある釜房ダム野尻湖程度の全リン濃度で、平野部にある他の指定湖沼と富栄養化の度合いが歴然と違います(指定湖沼全体の平均の約3分の1しかありません)。生物相も古代湖ということで固有種が多く、シジミひとつとっても他の湖沼はヤマトシジミかマシジミなのに、琵琶湖だけがセタシジミです。
琵琶湖法成立以来環境省は、このような極めて特殊な湖で検討した結果を他の富栄養化湖沼に適用するというスタンスを示すようになっています。これは科学的に妥当でしょうか。少なくとも琵琶湖・釜房ダム野尻湖といったやや中栄養な山岳湖、宍道湖・中海といった汽水湖(場合によっては元海だった児島湖もここ)、その他の富栄養化湖の3つくらいに分けて、それぞれの状況整理と対策を行うべきではないでしょうか。

環境省 水・大気環境局「平成28年度公共用水域水質測定結果」より