昨日は第19回生態学琵琶湖賞授賞式および受賞記念講演に参加しました。
受賞者のおひとりの森田様のご講演では、放流がサケ科魚類の漁獲減少につながっているのではないかとのご指摘が印象に残りました。またLeung氏のご講演で、実験室ではなくフィールドデータから、水温や塩分など様々な条件が異なる中で動物の毒性耐性を決める試みが紹介されました。
どちらのご研究も、日本の陸水域での諸現象を解明する上で、不可欠な視点だと改めて思いました。
因みにご講演前に私が述べた祝辞は下記です。あながち的外れな祝辞ではなかったと思いました。
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森田様、Leung様、この度は生態学琵琶湖賞受賞、おめでとうございます。日本陸水学会を代表して、この度の受賞を心よりお祝い申し上げます。
森田様は河川横断工作物がイワナに与える影響や温暖化がサケのサイズに与える影響など、環境と生物の関係を総合的に研究されていて、陸水学の視点に通じるものがあります。またLeung様は海産動物に化学物質が与える影響を総合的に研究されています。化学物質の発生源は主に陸上ですから、陸水生物に及ぼす化学物質の影響も深刻であることが予想されますが、野外での実態に関する研究は多いとは言えません。おふたりの先生方にはこの機会に是非、日本の陸水学者とも交流を深めていただき、いろいろコメントいただければと思います。
生態学琵琶湖賞は1991年から続いており、昨年までに30名以上が受賞しています。私自身は第10回で選考いただいたのですが、この賞を受賞して本当によかったと思ったのは、全く面識がない海外の方でも、同じ琵琶湖賞の受賞者ですと自己紹介するだけで、非常に親しく接していただき、共同研究まで発展したことです。実際、第5回受賞者のフォルテス様とは10年近く一緒にフィリピンの海草藻場の保全に関わる仕事を続けて参りました。また第6回受賞者のTimoshkin様とは現在、バイカル湖の研究を共同で展開しています。
お二人の先生方にも、この賞がきっかけとなって、国内外の研究者の方との交流が広がり、水圏生態系に関するご研究のさらなる進展につながっていくことを期待して、祝辞とさせていただきたいと思います。
(赤字は常々私が思っていることです。日本の平野部湖沼で1950年代後半に沈水植物が一斉に消滅した原因が除草剤であったことを解明したのが、生態学者ではなく私であったことは、日本の生態学者全般に、化学物質が生態系に与える影響を軽視する風潮があることを反映していると思われます)