沈水植物と透明度との関係

下の表は1937年発刊の吉村信吉著「湖沼学」に掲載されているものです。
11月1日付記事で「沈水植物が繁茂する透明な状態から植物プランクトンが繁茂する濁った状態、もしくはその逆にレジームシフトする」と欧米でモデルに基づいて提案された説をかたくなに信じ込んでいる水草教を批判しましたが、沈水植物が日本中の湖で繁茂していた頃から、湖は大きく「浅くて濁った湖」と「深くて透明な湖」と認識されていたことが分かります。

つまり「沈水植物が生えたら透明になる」なんてことはあり得ない、ということです。1930年代の、沈水植物が生えていた頃の全国の湖沼の透明度を下記の著書でまとめていますので、実際、どれくらいの透明度だったかご確認いただけます(ただしシャジクモに覆われたら透明になりますが、日本の生態学者が言っている沈水植物はシャジクモに特定していません)。
維管束植物の沈水植物は根から栄養塩を吸収しますから、水中の栄養塩は減りません。むしろ流れを停滞させることで貧酸素化を招き、リンなどが溶出するようになります。
また、沈水植物が活発に光合成をすると二酸化炭素が不足し、pHがアルカリ側に傾くので、重炭酸イオン(HCO3-)が増えます。そうなると、重炭酸イオンを使って光合成できるラン藻類が珪藻類より有利になると考えられます。宍道湖や琵琶湖で、水草の繁茂がひどくなるとともにアオコが発生しやすくなった理由は、除草剤の減少とともに、それが原因ではないかと私は思っています。
なお、一部で透明度と維管束植物の沈水植物の分布下限との関係を求めようとする動きがありますが、もともと濁った所にも生息できる種類が多いので、種類を選ばないと「無関係」という結果になると思われます。

貧酸素水塊―現状と対策

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(追伸)
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