外来生物の侵入や在来生物の絶滅がなぜ問題か

ある植物生態学者がツイッターで下記を書かれていました。
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外来生物の侵入や在来生物の絶滅がなぜ問題か。
1)それまでの生態系に順応していた社会システムが、生態系の変化に追いつかないので不利益が生じるから。
2)時間をかけてゆっくりと変化してきた在来生態系のほうが、成立したばかりの新奇生態系よりもレジリエントである可能性が高いから。
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専門が植物ですから植物を念頭においてのことだと思いますが、日本の生態系に限れば、エビデンスに基づいていない空想に過ぎない可能性が高いと思いました。
例えば日本で1)が深刻になったケースがどくれらいあるのでしょうか。むしろ社会システムが先に変わり、それに適応したのが外来種ではないでしょうか(例:ダムや堰堤によって土砂の移動が少なくなって樹林化した河川敷に外来種のハリエンジュが侵入)。
また2)は「在来生態系」というのがそもそも不明確な表現だと思いました。たとえば島根県宍道湖では、1950年代半ばに水田での除草剤使用が始まるまでは、シャジクモ類が優占していました。2000年代半ばに除草剤使用が減って侵入したのはオオササエビモという雑種と雑種ツツイトモでした。これらの雑種は繁殖力旺盛で、盛んに光合成することでpHをアルカリ側に傾けアオコが発生しやすい環境をもたらし(水草におおわれた琵琶湖でもpHが高くなり、アオコが頻発)、生態系は大いに撹乱されています。これら在来種によって構成された水草群落は在来生態系なのでしょうか。もし在来生態系ならば、ゆっくりと変化してきたというのはこのケースでは当たりません。また在来生態系でないならば、在来生態系とは何か、定義が必要になります。さらには、この水草群落自体はレジリエントかもしれませんが、宍道湖生態系全体から見たら、動物にとって全くレジリエントで無い環境が拡大しつつあるのが現状です。
植物だけでなく動物にまで広げても、外来生物の侵入で問題が生じたことはあっても、在来生物の絶滅で上記の1)・2)が起こった例は非常に稀ではないでしょうか。少なくともトキ、ニホンオオカミニホンカワウソが絶滅して上記1)・2)が起こったとの話は知りません。
このテーマ、学生にディベートしてもらうと面白いかもしれないと思いました。実際に野外で観察しているか、観察しているとしてどれくらい場所による違いや時代背景を意識しているか、対象として特定の種類だけ見ているのかシステムとしての物質の出入りを定量的に見ているかによって、全く異なる意見がでてくると思います。