基礎研究の衰退は研究費の増加では達成できない

そもそもセンター試験という、まるで科挙のような制度を廃止しなければこの国の基礎研究の衰退は必須と思っていますが、それに加えて大学進学にかかる経費が大きすぎるのも大きな要因です。この段階で研究の才能とは全く別のセレクションがかけられてしまいますから。
昨日、NHK総合で「事件の涙・選『そして、研究棟の一室で~九州大学 ある研究者の死~』」が再放送されていました。昨年9月7日、九大箱崎キャンパスで、元院生の男性が放火し自殺した事件を取り上げています。犯人は成績優秀、人柄もよく、クラスでも慕われていたそうです。しかし親の事業が破綻したことから中学卒業後自衛隊に入り、仕事と受験勉強を平行して九州大学に進学、大学院博士課程まで進みますが定職につけず、奨学金の返済に苦しみ、非常勤講師の職も雇い止めになり追い詰められた上での自殺でした。
日本以外の先進国の大学は、授業料が無料か安価、もしくは給付型の奨学金が充実しています。
https://resemom.jp/article/2016/11/29/35204.html
犯人が日本ではなく他の先進国に生まれていたら、このような最後にならずに済んだ可能性大です。
私は、公立高校の中では当時トップクラスと言われていたアメリカの高校を卒業しました。ハーバードやMITの教員が多く住んでいて、私のホストファザーもMITの教授でした。同級生は当然のようにアイビーリーグの大学に進学していました。学費はかなり高額ですが、彼らは奨学金とバイトで、自分で払う目処をつけていました。高校は2時には終わるので、それからはバイトに励めます。そしてアメリカのアイビーリーグの大学は、共通試験のスコアよりも、その人がボランティアやバイトでどれだけ豊かな人生経験をしているかを面接で必ずチェックしますので、バイトは全くマイナスになりません。むしろ「お勉強だけしてました」という人はアウトでした(最近は親の賄賂という話もあるようですが)。センター試験での足切りが存在する日本では、こういった選抜は不可能です。
加えて、アメリカのUniversityはMajorとMinorがあって、Majorが理系ならMinorは文系が必須で、どちらを落としても卒業できません。日本の理系の研究者と歴史の話で盛り上がることはまずないですが、欧米のUniverisity卒業者は理系でも相当文系の素養があり、とても話があいます。どちらが広い視野を持って研究できるか、自ずから明らかです。
東大では大学1,2年を教養学部で過ごすのですが、文系・理系のどちらも経験した私からすると、アメリカの教養とは似て非なるものです。アメリカでは同じ植物学をMajorでとった学生とMinorでとった学生が混じって聴講しますが、東大だと文系と理系は異なる教室で異なる難易度で行ってました。
私は共通一次試験を最初に受けた世代ですが、全く受験勉強はしてません(日本では高2だったので)。こんなつまらん試験で将来を決めるなんてアホな制度、すぐに無くなるだろうと思っていたのに、未だに無くならない日本に、将来はないと思います。