なぜネオニコチノイド殺虫剤の研究は不採択なのか?

4月1日は多くの研究者にとって、すごく心臓に悪い日です。科研費の採択結果が発表されるからです。
私は科研費2件と民間団体の助成を1件応募していて、科研費の1件はこれまでの成果を書籍として出版する内容、残りの2件はネオニコチノイド殺虫剤が内水面漁業(川や湖での漁業)の漁獲量減少原因である可能性を検討する内容でした。
ネオニコチノイドについては、昨年度の科研費・基盤Bに出したところ不採択で、その理由として「学術、科学技術あるいは社会などへの波及効果が期待できない」に最も多い票が入ってました。基盤Bは書面審査だけなので、今年は合議審査がある基盤Aに出したのですが、それでもまた不採択。さらには、これまで毎年採択されていた民間団体の助成も不採択でした。
ネオニコチノイド殺虫剤は害虫だけでなくあらゆる昆虫に効果がありますし、昆虫が属する節足動物(ミジンコなど魚の餌になる動物が多く含まれる)にも悪影響を及ぼします。ですので、ネオニコチノイド殺虫剤が水田に多用される日本で内水面漁業の漁獲量を減らす原因として検討されて当然なのに、生態学者は全く行っていません。
環境毒性の研究者はフィールドでは研究しませんので(せいぜいメソコスムまで)、本来は生態学者が化学物質の影響も検討せねばならないハズなのに、除草剤によって沈水植物が衰退したことを証明したのも、日本では生態学者ではなく、私です(海外ではアマモ場に与える除草剤の影響を生態学者が研究しています)。
では当たり前過ぎで科学的意義がないかと言えば、鳥の減少原因がネオニコチノイド殺虫剤ではないかと広範な統計値から議論した論文がNatureに掲載されています(Hallman et al. 2014)。科学的意義はおおいにあるのです。
私がネオニコチノイドが内水面漁業に与える影響を申請しても不採択になる理由として、審査する生態学系の研究者が、「化学物質の影響で生態系が撹乱されるなんて、社会的意義がない。」と考えているからではないかと疑ってしまいます。こうなったらクラウドファンディングとか、生態学系の研究者の評価が関与しない資金繰りをするしかないでしょうか。
ネオニコチノイドの多用が日本に与える影響を憂慮するみなさまからのご意見を是非お願いいたします。