北海道の標津川では2002年3月に、河口から 約8.5kmに位置する旧川(三日月湖)と標津川本川を連結する、 蛇行河川の復元実験が行われました。
http://www.rfc.or.jp/seitai/sibetu.html
実験に際して、洪水時の土砂堆積による河道の埋没や樹林化の可能性が検討され、そういったことが起こらない堰高が提案されていました。
標津川下流域における蛇行復元手法の検討 - 寒地土木研究所
先日、道東の巡検を行った際、その試験地を見てきました。蛇行復元箇所は懸念されたように、完全に土砂で埋まっていました。
この現象はかなり以前に起こったらしく、復元した蛇行河道は完全に樹林化していました。
一体、いつからこうなったのか、Ciniiで「標津川」で検索したところ、最も最近の論文は2009年で、この時点ではまだ現在のような完全な閉塞や樹林化・乾陸化は起こっていませんでした。
標津川蛇行復元試験地における砂州の形成と樹木の生育特性
自然再生と称して行われる事業を行う場合、少なくとも20年くらいはモニタリングを続けるべきでしょう。霞ヶ浦のアサザ植栽事業では、アサザを守るとして、それまで霞ヶ浦には無かった消波堤がアセスメントもせずに造られてしまいました。そして20年後、霞ヶ浦では消波堤によって外来植物の繁茂が促進されているとの論文が出されました。
Artificial wave breakers promote the establishment of alien aquatic plants in a shallow lake
この論文の共著者である西廣氏は、消波堤によりアサザを守るとの論文を書いた方です。しかしアサザ植栽事業の誤りについては全くコメントしていません。
生態学者は自然再生事業と称する改変を行う際に、アセスメントを軽んじ、順応的管理により対処すると説明しがちです。しかし実際には順応的管理は行われていません。
自然再生事業であっても、徹底的にアセスメントを行う。そして事業後は5年おきでもいいので、20年はモニタリングを行う。当初予期していなかったことが起こったら、原因の解明と対策を検討し、周知する。それができない限り、自然再生事業は税金の無駄遣いである上に、アサザ植栽のように自然破壊事業になってしまいますので、行うべきではないと思います。