農薬の悪影響は孫の代になって顕在化する

岩波書店が発行している雑誌「科学」11月号には、先日紹介した「グリホサートのヒトへの発がん性と多様な毒性」の<下>が掲載されています。非常に重要な指摘満載で全部読んでいただきたいのですが、特に下記は一般にはまだ知られていないかもしれないので、抜粋しました。近年、遺伝子の配列を変えずに遺伝子機能を調節する「エピジェネティクス」が注目されています。グリホサートはこのエピジェネティクスによって、孫の世代になって初めて悪影響が出てくる可能性が指摘されているのです。

ーーーー科学11月号1039~1047記事からの抜粋ーーーー
2019年の最新の論文では,グリホサートを妊娠8日から14日まで母ラットに25mg/kg/dayを腹腔投与し次世代のFl,次々世代のF2を交配したところ,世代を越えた影響が確認された。グリホサートの投与量は,半数致死量の0.4 %,無毒性量の50%に相当する濃度を用いている。その結果,曝露したラットや仔ラットで影響がほぼないにもかかわらず,次々世代のF2,さらに次の世代のF3で,腫擦や生殖機能不全,肥満など多様な障害が確認されている。
(中略)
DNAメチル化の変異が, ヒトで世代を超えた影響を起こすのかどうかは,実証が難しく,現在のところ研究者によって見解が異なっている。 しかし動物実験で起こったことは,ヒトでも起こる可能性がある。予防原則の立場からこのエピジェネティックな影響を考えると,グリホサートは使用規制や禁止を早急に検討すべきと考える。現行の農薬の毒性試験には,繁殖試験など次世代影響は入っているが, 三世代までの影響は調べられていない。今後.農薬の毒性試験にDNAのメチル化などエピジェネティックな影響についての試験も必須とすべきであろう。