井の中の蛙に大海は見えない

何年も前に国立大学を定年退官された水環境関係の大御所で、高校の先輩でもある先生から、「水関連の学会がいくつかありますが、いずれも視座の拡大が迫られているように感じています。」との年賀状をいただきました。
私は学生の頃から指導教官以外に、複数の大御所の先生方から目をかけていただいていました。特に西條八束先生には様々にお世話になり、いつだったか西條先生のお弟子さんから「私は長い間、西條先生の一番弟子を任じていましたが、最近の先生は山室さんの話ばかりで困ります。」と冗談半分に言われるほどでした。
その西條先生も、陸水学が総合科学から離れつつある状況を危惧しておられました。それで会長になったときに、あらゆる面にはびこっていた視野狭窄(例えば学会の財政が将来どうなるかさえ十分に検討できないとか)を何とかしようとしましたが、危機感の共有は困難を極めました。
考えてみれば大御所の先生方の時代と違って、今の学会で大御所になりつつある世代は、既に学問が細分化した状況での勝ち残り組です。陸水学という総合科学においても、陸水生態学、陸水物理学といった感じで、「陸水」が冠に過ぎなくなっている研究が目立ちます。陸水学会の創設に尽力された吉村信吉先生のようなオールマイティな方は、今の日本では現れないのかもしれません。
こういう状況で年賀状を下さった大先輩はどうすればよいと考えておられるのか、聞いてみたいと思いました。実は今年はその先生がおられる九州で某学会が開かれ、以前からその先生をお招きしたいと周辺に話していたところでした。予知ってたんでしょうか。。