「温暖化で砂漠のような海になる」は本当か?

海水温上昇が原因で海洋が酸性化するとか、熱帯の砂漠のような海になるとの見解を耳にするようになりました。
最近も下記の記事を見て首をかしげてしまいました。

まず、「きれいなサンゴは増えているけど、将来、砂漠のような海になってしまうかもなあ」は、サンゴ礁生態系を完全に誤解しています。サンゴ礁では窒素固定により、栄養分(窒素)がなくても正味の有機物を生産している非常に生産性の高い生態系です(国際誌で公表しました)。
次に、つい6000年前の東京湾にはサンゴ礁が広がっていました。

沼サンゴ

時は縄文時代、関東一帯には多くの貝塚が残っており、浅い海が非常に生産性が高かったからこそ人々が定住していました。また温暖化で海洋が酸性化するとしても、少なくとも縄文時代の浅い海では酸性化の影響はなく、石灰質の殻を持つ動物がサンゴから貝まで、豊富にいたことになります。
地球温暖化によって地球の様々な生態系に異変が起こっているのは事実だと思います。一方で、異変の原因を安易に温暖化(=地球規模の現象)と決めつけるのは浅はかです。例えばウナギの減少←シラスウナギの減少←黒潮蛇行の変動という説がありますが、少なくとも宍道湖では1993年に激減し、これは黒潮とは全く関係ありません。2018年のシラスウナギ不漁についても黒潮蛇行では説明できないとの意見があります。

2018年漁期 シラスウナギ採捕量の減少について 序:「歴史的不漁」をどのように捉えるべきか | Kaifu Lab

よく言われる言葉ですが、環境問題は「Think globaly, act locally」が基本です。原因の検討は世界共通の思考方式である自然科学で為すべきですが、何がどのように問題になっているかを調べるのは、現場であらゆるデータを集め、予見無く付き合わせるところから始まるのです。

(追伸)
地質調査総合センター、地質標本館が制作に協力したTVアニメ「恋する小惑星(アステロイド)」が2020年1月3日(金)から、各局で放送・配信が始まりました。
 アニメ公式サイト⇒http://koiastv.com/

第1話がTOKYO MXで今夜24時から再放送されます。AbemaTV(今夜22時半から)などでも配信されますので、ぜひご覧ください。