コロナ下の対応とコロナ後の対応

東京大学の活動制限レベルが引き上げら、研究室立ち入りが自粛されます。また柏キャンパスは緊急事態宣言 対象の千葉県にあります。今後しばらく頻繁には研究室に行けませんので、郵送先は自宅にお願いいたします
新型コロナウイルスによる研究活動への影響がいつまで続くかを見通すことは、今年度の自分の研究や、指導している学生の研究を着実に進めるうえで、極めて重要です。
私は、今後2週間で緊急事態宣言が出された地域の感染者が減ることはないと思います。さらには、宣言が出された地域で職や住いが奪われた人達が、まだ感染が広がっていない地域に移動し、4週間後には日本各地で、感染源が特定できない感染者が増加すると思います。
そう考える根拠は、日本がとった「緩い」対策と似た対策をしている国がほかにもあるからです。
スプートニクによると、EU加盟国で唯一、隔離体制を導入していないのがスウェーデンです。「集団免疫を獲得するために国民の大半がコロナウイルス感染症に罹患すべき。」との考えのもと、政府は可能な限りリモートワークへの移行を推奨し、70歳以上の高齢者との接触を避けるなど呼びかけているそうです。保育園や幼稚園、学校、レストランやバー、公共交通は営業を続け、大学のみが閉鎖、国境は閉鎖していないそうです。

この対策では「国民の大半がコロナウイルスに感染すべき」としていることが重要です。日本が緊急事態宣言でやっていることはスウエーデンがやっていることと極めて近いことから、日本での終息も、国民の過半数が感染した頃と考えてよいと思います。
問題は、スウェーデンは感染者が増えると思って対策をしているのに対し、日本はそうではないことです。かねてから言われている医療崩壊に加え、地方でも経済停滞が起こり、それに対して保障は出ないと思われます。
ですので私の今年度の研究については、既にあるデータやメタアナリシスが中心、学生さんはひたすら投稿した後、修士以後の自身の研究を見定めるためのレビュー(=論文を読むこと)をしてもらいます。

来年度以降は、日本経済がかなり痛手を負っていると考えられ、環境関係の研究費の拡大はあまり望めません。しかし今回のことで感染症に関する研究が重要であるとの認識は定着すると思われるので、もともと環境を健全にすることは感染症も含めて持続可能な生活を進めることにつながることから、研究成果や予算申請の強調点を工夫することが必要になってくると思われます。
一年後には、科学的・合理的に行動しなければ大切な人を守れないことを、国民の多くが知ることになるでしょう。日本で長年非合理な処遇や言動に悩まされてきた科学者にとっては、よい転機ととらえるべきでしょう。