これからの40年

本郷で私の講義を履修した学生さんが、修士はオックスフォードに進学して水管理政策を学びたいとのことで、推薦状を依頼されました。よく質問もし、これまでで最高レベルのレポートも出してくれた学生さんだったので快諾し、さきほどオックスフォードのサイトから提出しました。
20代前半の彼が還暦を迎える頃、日本の水環境はどうなっているでしょうか。
私が宍道湖の研究を始めたのがちょうど今の彼の年齢。その頃の宍道湖は、霞ヶ浦もそうだったのですが、羽化した成虫で前が見えなくなるくらい、オオユスリカがたくさんいました。富栄養化で増えたこともありますが、貧栄養のバイカル湖でも、幼虫が湖底に住み羽化した成虫が大量発生するタイプの虫がいます。
下の写真はバイカル湖湖岸の石ですが、茶色いシミのようなものは何だと思いますか?

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答えは下の写真、羽化した昆虫です。

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バイカル湖に限らず、シベリアの小さな湖沼で調査したときも、昼食のパンを食べようとしたら、パンを食べてるのか虫を食べてるのかわからないくらい寄ってきて大変でした。私が子供の頃のお祭りの夜店では、灯りがかげるほど虫が飛んできていて、あの頃と一緒だと思いました。日本はいつのまに昆虫ランドでなくなったんだろう?とロシアで思ったことも、ネオニコチノイドが水生昆虫を減らしていることに気づけた一因でした。
ネオニコチノイドが日本で使われるようになったのが1993年。もう27年も経っているので、今の若者は、かつての日本の水辺はたくさんの昆虫であふれていたことを知らず、今の状態が「自然」なのだと思っているのでしょう。
これから彼が過ごす40年に、ここまでひどい水環境の破壊が起こりませんように。