付着植物

私は本郷の講義で、アンモニアや硝酸が大気中で増えていることを説明する際、下記記事にある写真を引用しています。

これはヨーロッパのことだと思っていたら、ここ数年、自宅近くの公園の桜で、同様の現象が見られるようになりました。私は桜の光沢のある樹皮が好きで昔から幹を眺めていましたが、少なくとも10年前にはこんなに覆われた桜はなかったと思います。

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特に今年はこういった桜が昨年以上に増加した気がします。そう気づいて改めて観察したら、桜以外の木にも着いているものが多々ありました。

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これらの樹種も桜も、着いていないものも多く、どういった条件だと着くのかよく分かりません。桜の場合、樹齢は同じような桜で上記の着いている桜のすぐ近くにあるこの桜は、極くわずかしか着いていません。

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樹勢が弱い桜によく着くわけでもないらしく、菌にたかられているこの桜も、一番上の桜と比べると着いている割合はわずかです。

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栄養がなければ付着しても育たないので、大気中の無機窒素が増えていることは一因だと思います。加えて近年、つくばでも黄砂が降ることがありますので、中国からの越境大気リンの影響があるのかもしれません。栄養分が増えたところに、樹木側の何らかの原因(付着植物をはねのける力の減退)が重なることで、強度に着く樹とそうでない樹に分かれるのかもしれません。では樹木側の原因は何で、なぜ近年起こるようになったのかは謎です。
今回のことで改めて、何の変哲もない、当たり前と思っている光景こそ、時系列で画像に残さなければと思いました。かつては空を覆うほどいて当たり前だったアカトンボも、たくさんいるのが当たり前過ぎてネオニコチノイド使用以前の密度が全国でもほとんど記録されていなかった為に、ネオニコチノイドが原因だと証明するのが難しいのです(稀少種の記録は残っています)。
人間は今や、わずか数年で「当たり前の自然」を当たり前でなくする力を持ってしまっています。