宍塚大池のタイムカプセル

つくばセンターから車で10分程度にある宍塚大池は「日本のため池100選」にも指定され、周辺は広大な里山に囲まれています。
その宍塚大池では毎年刈り取るほど繁茂していたハスが、2020年から全く生えなくなりました。原因はオオクチバスが激減し、オオクチバスが餌としていたアメリカザリガニが激増、植物を食い尽くしたためとされています。

陸水研ではハスが繁茂していた頃に動植物を採取し、炭素・窒素安定同位体比を分析していました。オオクチバスがいなくなった今、池に残っている動物の中にアメリカザリガニを食べてくれるものはいるのか、当時学生だったOBが再解析しています。

その結果、アメリカザリガニはウシガエルの餌として日本に導入されたにもかかわらず、宍塚大池のウシガエルはザリガニをあまり食べていないようでした。さらにはウシガエルのオタマジャクシも植物を食べているらしいことが分かってきました。オオクチバスはウシガエルのオタマジャクシも食べていましたから、オオクチバスがいなくなったおかげで、宍塚大池は水生植物が生えづらい状況が続きそうです。
今日は産総研に試料の整理に行きました。まだハスもオオクチバスもいた頃のサンプルが保管されていました。もう戻らないかもしれないこれらの動植物の試料。将来、様々な分析が可能になるでしょうから、これらの試料は宍塚大池のタイムカプセルです。有効利用してくださる方にお譲りできるまで、大切に保管したいと思います。

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