ハス消滅原因の解明2年目

手賀沼ではかつて、繁茂をどうやって防ぐかを検討していたほど、広大なハス群落がありました。
それが突然、2020年に消滅しました。原因は分かっていません。

【第134号】全滅の手賀沼ハス群生地 | 柏市役所

琵琶湖でも2016年にハス群落が突然消滅しました。原因として堆積物での酸欠が疑われています。

根拠となった調査は、ハス群落が消えてから行ったもので、「ハス群落が存在したときには酸欠していなかった」との証拠はありません。
陸水研では手賀沼のハス群落が拡大中だった2013年に群落内外で酸素濃度を測定し、さらには冬でも群落内の堆積物からはメタンが発生するほど嫌気的だったことが分かっています。この調査結果は修論としてまとめられているだけで、一般には知られていませんでした。
そこで修論を書いた卒業生にお願いして投稿論文化してもらい、このたび発行されました。

宮澤・山室(2022)浮葉および抽水植生が流動と溶存酸素濃度に与える影響~ハス群落を例に.陸水学雑誌,83 ,1-13

では手賀沼や琵琶湖でハスが消滅した原因は何か?
牛久沼ではカメの食害が原因とされていたので、今年度、プランターにレンコンを植えて牛久沼に水没させ、カメが食害しないようにネットをかけて観察したところ、食害されてないのに枯れました。一方で、湖水の影響が少ない岸よりでは自然に生えて育っていました。これらから湖水に含まれている何らかの物質、恐らく農薬が疑われました。

そこで東大ハス見本園から廃棄されるハス苗をいただいて、来年度は手賀沼の中と外で同様に育てた場合にどうなるかや、手賀沼に侵入した外来植物の影響があるかを、地元のNPOのご協力で進めることになりました。6月に採否がわかる科研費が採択されていたら、手賀沼水の農薬濃度も測定する予定です。

下の写真は昨年頂いたハス苗を鉢から回収する方法を、東大ハス見本園の職員の方に実演してもらっているところです。多くの方々のご協力によってはじめて、研究が進みます。

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