少なくとも1980年頃からの底生動物相の変遷

北米の五大湖で底生緑藻のシオクサが異常繁茂して打ち上がる現象起こる原因として栄養塩、特にリンが有力視されています。富栄養化とともに増え、一時期減ったものの外来二枚貝が侵入してからそれまでにない勢いで増えた為です。外来二枚貝が植物プランクトンを濾過して栄養塩に変えることや、外来二枚貝が定着基盤にもなるとの考え方です。
これに対して私は、捕食者が減ったからではないかと考えています。島根県の宍道湖でもシオクサと陸生植物起源デトリタスが混ざったものは、1980年代初頭の卒論の頃にも打ち上げられていましたが、すぐにフナムシがたかって分解していました。そのフナムシが宍道湖ではいつのまにか激減して、誰も打ち上げられたシオクサを食べません。
そこで五大湖の大型底生動物の変遷を文献から調べようとしたのですが、1990年代以降のデータがうまく集まりません。知人の知人、そのまた知人とつないでいただいた結果、活発に研究してきた大型底生動物の専門家6名のうち4名が退職し、後任を底生動物の専門家が引き継いだ研究機関は1つだけで、現在の専門家は3名と半減してしまっているそうです。
研究者が多いアメリカでこれなので、日本の陸水の底生動物相の変遷なんて、今は国立環境研究所が霞ヶ浦でかなり以前からモニタリングを続けていますが、いずれ日本のどの研究機関も対応できなくなりそうです。