参考書17「新版だれでもできるパックテストで環境しらべ」

総合学習としての環境教育に求められるのは、科学的な思考に基づいて、問題解決のために自ら判断と行動ができる能力を養っていくことです。子どもだから科学的な思考はできないだろうと見下して、例えばアサザ基金ホームページの記載にあるような似非科学を無批判に信奉して、「アサザを植えれば湖の自然が再生する」との「答え」を与えるのは、あらゆる観点から環境教育とは言えません。
たいていの子どもは、実験や観察が好きです。小学校の頃、リトマス試験紙でいろんな水のpHを測るとか、デンプンを含むものにヨウ素をかけたら色が変わるとか、そんな実験がある日は、理科が苦手な友達も大はしゃぎで取り組んでいました。
パックテストとは、透明プラスチックチューブの中に測りたい水をいれ、反応後の色の濃さで濃度を測る簡易測定キットです。湖の「汚れ」の指標となっているCODを始め、健康に関心のある方なら気になるであろう水道水の残留塩素、アルミ鍋からでてくるアルミニウム(アルツハイマー病との関連が指摘されています)、ハム・ソーセージの亜硝酸、タンスや学修机のホルムアルデヒドなども、工夫次第で測れます。子供の総合学習だけでなく、私たちの生活を自ら考え守る上でも、とても有効なツールです。
この本には上記を含め、38項目の測定法が解説されています。加えて、各項目に「解説」と「豆知識」が記されています。たとえば「アルミ鍋のアルミニウムを調べる」という項目の「解説」を抜粋すると、「アルミニウムは地球上に多大に存在する元素だけに、野菜、きのこ類にも含まれています。食べ物中のアルミニウムは容器からの溶出だけではありませんが、気になる人は豆知識を参考にしてください。」とあり、「豆知識」には「酢の物、酸性の食品(梅肉のジャムなど)をアルミ製の鍋で加熱すると、アルミニウムが溶出します」「調理した料理はアルミ鍋に長時間保存しない、とくに酢のもの。」など記されています。なぜなのか。パックテストを使えば、その答えも自分で考えることができます。
陸水研の目的は「人間が持続的に生きていくにはどうすればよいか考え、実践する」ことです(因みに経営理念は「水環境分野において、世界でひとつだけの研究をする(ナンバーワンではなくオンリーワン)」です)。本書は陸水研の目的を達成する上でとても参考になる内容なので、参考書に指定し、来年度以降の学生さんには必読とします。

だれでもできるパックテストで環境しらべ

だれでもできるパックテストで環境しらべ