今年も本郷の講義で、パックテストを使った水質測定を行いました。
昨年はパックテストを使ったことがある学生は3分の1未満でしたが、今年は半数近くいて驚きました。小中学校で環境教育を行うよう指導が強化されたことが、この学年から反映しているのかもしれません。
ただし、おそらくその使われ方は近くの池とか小川での「どんな生き物がいるか調べてみよう」「水質を見てみよう」とかで、アメリカザリガニがいてCODが高かったから「この水は汚れている」と結論して終わり、みたいな感じだったのではないでしょうか。
私の講義では口腔洗浄剤を200倍にしてリンとCODを測ってもらいます。CODは6.5mg/l以上あると水道原水として使用してはならないことになっています。またリンは0.02mg/lが富栄養化の目安とされています。口腔洗浄剤は、ほぼ使用したそのままの濃度と量が排出されます。測定結果から計算すると、CODを水道原水に使用できる濃度まで薄めるには200倍、リンを富栄養化しない程度まで薄めるには1500倍にしなければならないことがわかりました。
ここから、流域人口の1000分の1が1日50ml口腔洗浄剤を使うだけでも大きな負荷になることや、その負荷に対して湖岸や川岸にヨシやアサザを植えることが効果的な浄化対策となるのかなど、具体的にイメージすることができるようになります。トイレや洗面台、台所で流すものについて窒素やリン、CODを測って積算し、どこを工夫すればどれだけ減らせるか考えてもらうという応用も考えられます。
文部科学省が環境教育に力をいれていることは歓迎しますが、ちょっと工夫するだけでも科学的な知見に基づいて自ら考える環境教育は可能なのに、安易に科学的素養のないNPOなどの重用を謳うのは責任放棄だと思います(10月26日付記事参照)。