シジミ漁による栄養塩除去効果

ヤマトシジミ 水質浄化」でググったら8000件以上ヒットするほど、知れ渡るようになったシジミの水質浄化効果。私が学位論文を書いた頃、欧米では二枚貝がかえって水質を悪化させるとの論文さえあったのですから、隔世の感があります。
そのシジミの浄化効果で見落とされているのが、殻に含まれる窒素・リンです。リンについては、殻はカルシウムを多く含みますから、リンがアパタイトなどの形で含まれているだろうと、化学に明るい人には容易に想像できることです。では窒素はどうか。
実は窒素も殻の中に含まれていて、ずっと昔に分析したときの結果では、シジミ中の窒素は身と殻とで同じくらいの量でした。シジミの漁獲を通じた窒素・リン除去量を計算した報告は、私が確認した限り、こうした殻の中の窒素やリンを無視し過小評価になっています。
ではなぜ殻の中に窒素があるのか。石灰化は化学反応ではなくシジミ代謝として行われているので、その代謝を担う細胞の痕跡が殻の中に保存されることになります。写真の左側は、シジミの殻を塩酸にいれて無機炭素をとばして残ったものです。石灰化を行った細胞の跡が、きれいにシジミの殻のように残っていることが分かります。この有機物の中の窒素が、従来の浄化効果計算では見落とされていたわけです。