川や湖から食べられる魚が消える

日本の川や湖で取れる魚はここ20年で急速に減っています。その原因は大きく2つあり、近い将来これにもう1つ加わり、壊滅的になると考えています。
ひとつめは河川管理者(国交省自治体土木関係)が魚や貝の視点が無いまま「多自然型川作り」を進めていることです。長良川河口堰問題ではサツキマスなど水産資源に与える影響が大きくクローズアップされたのですから、多自然型河川の検討には水産サイドの関係者も入ってしかるべきでした。しかしその後20年以上、水産の知見がないまま川作りをしてきたために、今や河川は本来住んでいる魚がほとんどいない川になってしまいました。ウナギが減った理由の一部もこれだと思われます。
ふたつめはネオニコチノイド系殺虫剤です。水生昆虫は魚にとって重要な餌です。ネオニコチノイド系殺虫剤は、まさにその昆虫をターゲットにしているのですから、農村部を流れる河川やその下流では、影響が無いはずはありません。
みっつめは、既に一部の湖沼や河川で問題になっている水草の繁茂です。この原因の一部はひとつめと同じ、水産サイドの知見をいれなかった河川管理、一部は除草剤使用の減少だと考えています。
マグロの漁獲が規制され、中国などの乱獲によりサンマの水揚げが激減するなど、沖合漁業、遠洋漁業の展望は非常に厳しいものがあります。今後も日本人が魚介類を食べ続けるためには、沿岸漁業内水面漁業(川や湖での漁業)をしっかり維持することが不可欠です。そのためには水産の専門家に加え、川や湖の環境は本来どうであり、治水と本来の環境との折り合いをどうつけていくかを検討できる陸水学研究者と土木研究者とが、ともに研究を進める研究所が必要でしょう。水産庁国交省の川・湖関係者には、それくらいの危機感と熱意をもって打開に当たっていただきたいと思います。