タイワンシジミは在来種?

陸水学雑誌の最新号(80巻号)に40ページにわたって、外来シジミに関するレビューが掲載されています。
日本では現在、タイワンシジミと呼ばれるシジミが外来種とされ、日本のマシジミを駆逐してしまうと主張されています。私は1980年代半ばにシジミ関係の論文を片端から読んだことがあり、その当時の知見からすると、マシジミとタイワンシジミ(Mortonの分類ではC. fluminea)を区別するのは無意味だろうと思っていました。
今回のレビューでもやはり、マシジミとタイワンシジミを分類学的に区別するのは現状では困難と解説されていました。さらには最近の研究として、
1)マシジミはおそらく江戸時代に大陸から移入した、当時では外来種(黒住、2014;中野・森井、2018)
2)日本でタイワンシジミとされている二枚貝は、在来のマシジミから突然変異によって生まれ、雄性発生によりクローン繁殖して分布を広げた可能性がある(山口、2015)
が紹介されていました。
日本のタイワンシジミは何者か、その解明をおざなりにするのはもってのほかですが、「外来種」と決めつけて駆除に専念するのは違うかなと思います。日本ではアメリカザリガニが駆除は不可能として特定外来種にはなっていません。アメリカザリガニは欧米では食料として利用されているのに、日本では一般には食用できてとてもおいしいことが知られていません。身近な水環境を「汚い」と思っているからかもしれません。
1950年代までの日本人の多くが、身近な水域から魚介類をとって食べていました。そのことが身近な水域に不用意に物を捨てないなど水質保全につながっていたと思います。アメリカザリガニやタイワンシジミと称される淡水二枚貝が旺盛に繁殖する現在、それらを身近な食材として利用することで、これらだけが異常に繁殖しないようにするのがいいのではないかと思います。