水草は基本的に繁殖力が強い

日本の川や湖といった水辺は、近年の水害を思うまでもなく、非常に撹乱が大きい環境です。こういった撹乱が大きいところに生える水草類は、短期間に成長・繁殖する、生態学の概念でr戦略をとる種類が多いです。
NHK趣味の園芸でビオトープを取り上げた記事ではこのことを明記して、ビオトープに使った水草は、たとえ在来種であっても水域に捨てないようにと注意しています。
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水辺という環境が不安定なせいか、水生植物には繁殖力がとても強いものが多くあります。そのため、ビオトープに使用される水生植物が湖沼や河川に入ると、爆発的にふえてしまうおそれがあります。
実際、水生植物がふえすぎて生態系に影響を及ぼしたり、水流や船舶の航行を妨げて農業や漁業に被害を引き起こしたりしている地域があります。
いったんふえた植物を除去するには、莫大な費用と労力、時間が必要です。ビオトープに使用した水生植物は、外国産、日本産にかかわらず、株はもちろん、切った枝葉も野外に捨てたりせず、可燃ゴミに出すなどして確実に処分しましょう。
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ところが過去には生物学者が、水草はそういう生物だと認識せず、実験に用いた外来種を環境に捨ててしまいました。その結果、全国に広がったのがオオカナダモと言われています(たとえばWikipediaの「オオカナダモ」参照)。
またアサザという典型的なr戦略の在来種(なので海外では侵略的外来種)を静穏な環境に植栽することを推進した生態学者もいます。一時的には増えても、r戦略のアサザはやがて自滅し、別の場所で増えていきます。それも知らずに、霞ヶ浦の自分達が観察しているところから消えたことで「日本のアサザが絶滅した」と吹聴するNPOが、子供達の自然観察を指導したりしています。水辺に関心がある学者やNPOの知的レベルがこの程度なので、日本の水環境は劣化するしかなさそうです。

www.shuminoengei.jp

残念な「れいわ新撰組」

私は原発、辺野古、拉致問題に関心を持っていて、このブログでも原発や辺野古基地化について反対の立場を表明してきました。拉致問題は国の責任放棄としか思えず、蓮池透氏の著書「拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々」などを読んでました。
なので比例代表は「れいわ新撰組」に投じたいところだったのですが、平気で嘘を言って攻撃する候補者がいて断念しました。
その候補者は昨年、某NPOと組んで「霞ヶ浦でアサザという植物が絶滅した。茨城県や国交省のせいだ!」と攻撃していました。

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霞ヶ浦でアサザが絶滅した事実はありません。昨年も今年も、霞ヶ浦で開花しています。

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この候補者は下記のように、元生態学会長も攻撃しています。

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実はこの候補者は私にも事実無根の言いがかりをブログやツイッターで書き立てていました。その一部が下記です。
http://anmintei.blog.fc2.com/blog-entry-937.html
このブログの下の方に、「生態学を勉強した私としては、山室教授の言っている事が正論にしか思えないのです。」とのコメントが投稿されています。それに対してこの候補者は
「ということは、生態学を勉強すると、頭がおかしくなる、ということを意味しています。それは大変深刻なことです。」
と答えています(こういう考え方をする人なのです!)。
私への批判は荒唐無稽と無視していましたが、万が一この候補者が議員になったら、あることないこと持ち出して省庁等を攻撃し、国会の貴重な時間を無駄にしかねません。
また、杞憂とは思いますが、かつてナチスは泡沫政党とあなどられるうちに、いつのまにか政権を取って、科学を装った非科学的主張(アーリア人種至上主義など)を広め、ユダヤ教信者を虐殺しました。この候補者は一般受けする文章を書くのが得意で、著書「原発危機と『東大話法』―傍観者の論理・欺瞞の言語―」は一時話題になりました。
「れいわ新撰組」はナチスのように、事実無根の煽動によって国民を動かすこともやれる要素を抱えてしまったと言えます。
残念です。

お花見できるほどのアサザ群落はいずれ霞ヶ浦から消える

霞ヶ浦は、本来、お花見ができるほどのアサザ群落が永続する地形ではありません。8月14日記事で説明したように、麻生の群落も船溜まりにより本来の強い波の影響が弱くなったから定着したのです。粗朶消波堤を造り波を弱くした植栽地も、数年はお花見ができるほど繁茂しましたが、やがて消滅しました。その原因は枯死体による有機汚泥の蓄積でした(下記リンクの論文に記載しました)。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rikusui/77/1/77_39/_pdf/-char/ja
8月16日記事で、国交省が造った石積み消波堤内に侵入したアサザが麻生で消滅しても健在であることを紹介しましたが、それはアサザが侵入して日が浅いからで、やがては自身の枯死体により消滅します。
アサザが消滅した後の消波堤内には、ヒシが繁茂するはずです。このことは霞ヶ浦を30年にわたって観察し続けてきた下記の本の著者も同著で予言しています。
ちなみに、当時は予測されていなかった外来植物の繁茂が、現在、消波堤内部で問題になっています。アサザ植栽事業までは霞ヶ浦に存在しなかった、そして日本の他の大湖沼ではこれ程の規模で造るという非常識なことはされていない消波堤さえなければ、波が高い霞ヶ浦の砂浜湖岸に外来植物は定着できなかったのです(琵琶湖でも繁茂しているのは流入河川近くなど、波当たりが弱いところです)。
同著ではさらに、アサザ植栽運動とは何だったのか、同様の、保全と称する環境破壊が他の水域で繰り返されない為にはどうすればいいのかにも触れています。身近な水域の保全に関わっている方々には、是非読んでいただきたいと思います。3回にわたりこのブログでご紹介した保全生態学者が霞ヶ浦で行ったことについても、極めて冷静に分析し、何が間違っていたかを的確に指摘しています。
ネットから見つけたこの本の書評は下記です。
http://macroscope.world.coocan.jp/yukukawa/?p=2429
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霞ヶ浦考現学入門154頁から
アサザ群落の水域は泥場化が進行するが、それはやがてアサザ自身にとっても存亡の危機となる。砂泥の浅い湖底に伸びたアサザの茎(茎の状態で越冬する)は、強い波浪時には、前述のように波によって引き抜かれ、岸辺に打ち上げられやすくなる。アサザ群落はこのようにして、群落面積の拡大、縮小をくりかえしながら、泥場化が著しくなれば、アサザさえも生育できなくなり、ヒシ群落に少しずつ遷移する。ヒシの種子は、湖底の泥中から発芽するが、成長後は水中に伸びた細根から養分を取るので湖底から離れても生育できる。ただし、ヒシは波浪に弱く、流され、岸に打ち上げられやすいので、静穏域が生育場である。消波施設で囲い込むことはアサザ群落からヒシ群落への遷移を促進することになる。

水面が葉で覆われても酸欠しないと妄信する生態学者

昨日の記事で紹介したように、地元住民が大反対していたアサザ保全事業をアセスメントもせずに国交省が断行できたのは、某生態学者とその師匠が全く科学的根拠もないまま「霞ヶ浦で緊急対策をしなければ日本のアサザは絶滅する」と主張したからでした。公共工事による自然破壊を食い止めるべく成立したアセスメント法を、全く骨抜きにしてしまったのが彼ら生態学者です。
下にある常陽新聞の記事を見ればその生態学者が、水面が葉におおわれてもアサザであれば酸欠しないという趣旨の発言をしていたことが分かります(水面が葉で覆われればアサザであろうがウキクサであろうが酸欠になるのは常識ですが、こういった主張を臆面無くする自称生態学者がいるので、私は実際に霞ヶ浦アサザで覆われたところの酸素濃度を測定して、酸欠していることを論文で発表しました)。
2001年7月.pdf 直
ところで、なぜこのような修正記事が出されることになったか、不思議に思いませんか?私はその理由を知っていますが、敢えて書きません。皮肉なのは、この修正記事を書かせたためにかえって、某生態学者の無知蒙昧ぶりがさらけ出されたことです。もとの記事は下記なので、修正記事さえなければ、水草によって酸素がどう変化するのかさえ知らないことがバレずに済んだのです。お気の毒(というより滑稽ですね)。
2001年6月.pdf 直
この記事によると、1972年時点でアサザは2箇所でしか繁茂していませんでした。現在は国交省が設置した石積み消波堤に次々侵入しています。麻生の群落が消えたから日本ではアサザが絶滅するなどと荒唐無稽なことを言っている団体もあるようですが、2015年10月14日記事で紹介した場所では、今でもアサザが立派に繁茂しています。もし水位操作によって衰退するのであれば、同じ霞ヶ浦で繁茂地を拡大することができるはずがないですよね。このことからも、某生態学者が国際誌でも書いた、水位操作によりアサザが衰退したという記載も事実無根だったことが分かります。この国際誌論文は日本の恥なので、昨年アメリカで行われた学会で事実無根であることを説明しました。目下、「これはファンタジーを信じた生態学者を名乗る人物によるデマカセです」という趣旨の論文を準備しているところです。
(追伸)
何の根拠も示さず「山室氏の書いたもののうち、もっとも単純な間違い」などと失礼なツイートをした某生態学者がどういう主張をしてきた人物なのか、3回にわたって紹介しました。「この生態学者が霞ヶ浦の生態系を破壊した」は、安定した地位も収入も何もかも投げ打って、霞ヶ浦保全に人生をかけてこられた方の言葉です。あのツイートを見てこのブログにたどり着いた方々のご参考になれば幸いです。

御用学者

このブログの「アサザ基金の欺瞞」をクリックすると、一番下に鷲谷いずみ氏を批判した記事があります。私は当初、弟子の某氏は鷲谷氏の言いなりになっているのだと好意的に解釈していました。それである時某氏に、「なぜ霞ヶ浦で環境を改変してまでアサザ保全しなければならないのですか?」と尋ねたところ、「これを読んで勉強してください。」と送られてきたのが下記論文です。
保全生態研究「日本における絶滅危惧水生植物アサザの個体群の現状と遺伝的多様性」
え?こんなデタラメな根拠で、二枚貝がたくさんいた霞ヶ浦の砂浜湖岸に大規模な消波堤を造ってヘドロ化させた?しかもこんなトンデモ論文を生態学会が受理した?
それもあって私は生態学会には、何度誘われても入りませんでした。こんな論文を受理して、かつ誰も批判しないなんて、とても科学者の集まりとは思えなかったからです。
アサザは雄しべが雌しべより長いタイプと雄しべが雌しべより短いタイプが交雑しないと実ができないと言われています。そしてこの論文では、その2タイプが混在していたのは霞ヶ浦の麻生だけだったと主張しています。それを根拠に霞ヶ浦で某NPOとともに、アサザ保全の緊急工事をアセスメントもせずに行わせたのです。
私は東大の講義で、「2タイプあるかどうか調べるには、最低何サンプル採る必要があると思う?」と質問しています。統計的な根拠はともかく、理系の直感でどう考えるか知りたいからです。今までで一番少なかったのは15サンプルでした。
さて、この論文の表1をご覧ください。全国で64地点からサンプルを採っているのですが、うち35地点では花型を調べておらず、「不明」としています。さらに、花型を調べた地点のうち、1サンプルしか採っていない地点が9地点あります。1サンプルで2つ花型があるのか調べることはできませんから、花型を調べたことにはなりません。つまり全国64地点のうち7割近い44地点については、花型を調べていないのです。
さらには霞ヶ浦麻生のアサザは当時の繁茂面積が4000平方メートルでしたが、57サンプルもとって、「全国でも2型あるのはここだけ、かつ遺伝的多様性も最も高い。」としているのです。これに対して繁茂面積が8000平方メートルもあった男潟では6サンプルしか採取せず、かつ花型の確認さえしていません。繁茂面積が3730平方メートルの久米池では2サンプルだけ採取して、遺伝的には1種類、花型も1種類だけと報告しています。この研究が統計学の基本を無視したデタラメ論文であることは火を見るより明らかです。
つまりこの論文のデータから、霞ヶ浦麻生が全国で最も遺伝的に多様性があり、かつここでしか実生ができないと主張することはできないのです。なのに「この論文で勉強しなさい。」と送ってきた某氏はきっと、科学の基礎である論理的思考を習得する機会が無かったのでしょう。
ちなみに上記論文の筆頭著者は、昨日紹介した私達の論文の著者でもあります。自身の過去の論文の短所を認めているのです。また、上記トンデモ論文で3サンプルだけ採取して「花型はひとつしかない」と報告された琵琶湖の用水路(!)で我々は2花型あることを見いだし、かつ、遺伝的多様性は霞ヶ浦の麻生と同等であることも分かっています。他にももう1箇所、2花型あるところを見つけています。サンプル数を増やして研究すれば、まだまだ2花型あるところが増える可能性があります。
結論として、霞ヶ浦の麻生でアサザ保全しなければ日本のアサザが絶滅するとの科学的根拠は全くありません。
さらに注目していただきたいのは、表1のアサザ採集地で多いのが水路、川、沼で、大きな湖は少数であることです。昨日も書いたようにアサザは浮葉植物ですから、波が高い大湖沼では奥まって波が弱い地形のところにしか生えることができません。霞ヶ浦では護岸工事のときに多くの船溜まりが作られ、波あたりが弱い場所が発生してから複数箇所に侵入できるようになったのです。
霞ヶ浦の湖岸で行われたアサザ植栽事業は、魚で例えると、霞ヶ浦の湖岸に消波堤を造り、絶滅危惧種のメダカが過ごせるような波当たりの小さい水路を作って保全しようとするのと同じくらい愚かなことでした。保全すべきは、水路やため池など、もともと波当たりの弱いところです。そういうところがコンクリート三面ばりなどになってしまったことなどが、全国でアサザが減少した原因として大きいのではないでしょうか。だからこそ、本来波が強い霞ヶ浦に人工的に消波堤を造るという不自然な保全ではなく、それぞれの地元のアサザ本来の生息地で保全のためにできることが必ずあるはずなのです。
アサザは、霞ヶ浦周辺でもかつては水路や田んぼで生えていたことが写真や地元の老人からの聞き取り調査で分かっています。また真の科学者であれば、たとえ波あたりなどの物理的要因に気づくセンスがなかったとしても、「保全・再生」と主張する根拠として過去の航空写真で霞ヶ浦の湖岸に浮葉植物が本当にいたのか、確認していたはずです。
ご紹介した論文から分かるように、某氏は論理的な思考力に欠け、得られたデータから都合の良い結論を導きました。その結論は、下記新聞記事にあるように地元住民が猛反対していたのに、50億円とも100億円とも噂された土木事業を国交省がアセスメントもせずに強行する根拠に使われました。そして某氏は今も国交省のアドバイザーです。一般にこういう研究者を「御用学者」と呼ぶのではないかと思います。
2002年10月20日.pdf 直

この生態学者が霞ヶ浦の生態系を破壊した

霞ヶ浦でしかアサザは実生ができないとか、水位操作によってアサザが衰退したなどと、いい加減な論文を書いて霞ヶ浦の湖岸生態系を破壊した生態学者が、「『アサザ』で検索してここ数日の話題が少し見えた。一番驚いたのは『もともと霞ヶ浦には無かったんでしょ?』という意見。山室氏の書いたもののうち、もっとも単純な間違いがかなり流布していることにも驚いた。」とツイートしていました。
この人、「アサザ霞ヶ浦でしか実生ができないというのは間違いですよ、ちゃんと琵琶湖に流入する水路に2型ありましたよ。」と伝えていたのに、その後に開催された陸水学会で「霞ヶ浦でしかアサザ保全できないから、あの緊急対策は意味があった。」などとヌケヌケと話したので、師匠だけではなく本人も自分の想像したストーリーでデータを作ってしまうタイプの研究者だと気づきました。
そもそも霞ヶ浦は、逆水門が運用されるまでは汽水湖だったんです。今の宍道湖アサザが生えていないように、少なくともシジミが採れていた塩分範囲には生えることができなかったはずです。1960年以前のアサザの標本も、湖内で採集したと明記されているものは皆無です。宍道湖でも周辺の淡水の用水路にはアサザが生えていますから、周辺の用水路で採集した可能性が十分あります。以上については下記の論文で報告しています。
保全生態学研究「アサザの生育環境・花型・逸出状況と遺伝的多様性に関する追試」
また1947年に米軍が撮影した航空写真をみると(画素数が小さいものは国土地理院のサイトで無料で見れます)、そもそも浮葉植物が繁茂していたのは北部の湾奥の一部です。琵琶湖もそうですが、大きな湖沼は波浪が強いので、奥まった波の穏やかなところでしか浮葉植物は生えません。
霞ヶ浦で最近まで大きなアサザ群落があった麻生でも、淡水化と護岸工事が行われるまではアサザは生えておらず、子供達がカラスガイなどを取っていた、二枚貝が多い砂地でした。下の写真のように、護岸工事以前は麻生には湖岸にヨシが生えているだけでした。赤で囲ったあたりに右側の写真では船溜まりがあることが分かります。これを作ったことで波が弱まったので、アサザが入り込むことができたのです。つまりアサザ霞ヶ浦を淡水化して護岸するという水ガメ化することで繁茂するようになった植物なのです。

ちなみに霞ヶ浦河川事務所は、この人物のおかげで地元の霞ヶ浦を守って来た住民が反対した工事をさせられたのに、今でもこの人物をアドバイザーにしているのが私には全く理解できません。長良川河口堰問題以降、生態学者と称する人の意見を聞かないとダメというルールになっているのでしょうか。でも、水界生態系を全て理解している生態学者なんているはずないのですから、少なくとも植物だけでなく動物の生態学者もアドバイザーにすべきだと思います。冒頭の私を侮辱した研究者ときたら、アサザ保全工事以降に霞ヶ浦二枚貝が激減しているのに、全く無関心です。
この研究者がいかに科学的素養が無いか、明日の記事で彼自身の論文を使って解説いたします。

アサザ霞ヶ浦で拡大中

10月11日の調査で、少なくとも2年前には認められなかったアサザ群落が広がっているのを発見しました。しかも、霞ヶ浦アサザの遺伝子を網羅的に報告した既報(上杉ら、2009)にはない、等花柱花でした。

アサザは海外では侵略的外来種として様々な弊害をもたらしています。Global Invasive Species Database
にはその弊害として、群落下部は水が停滞し酸素濃度が低下する、魚の生息が阻害されると書かれています。
こういったタイプの種は、いわゆるr戦略を採るものが多いです。即ちニッチェが空いたらさっと侵入し、短期間で増えるのです。上記写真の群落の広がりからも、アサザの旺盛な繁殖力が分かります。
ちなみに霞ヶ浦アサザが広がったのは、護岸工事以降の1980年代です。最も大きい群落がある麻生も、地元住民の聞き取りによれば、70年代までは大型二枚貝が多く生息する、水草などが生えることができない波あたりの高い砂浜でした。実際、アサザが生えている砂地を掘ってみると、カラスガイらしき大きな貝殻がでてきます。
霞ヶ浦では護岸工事と並行して、コンクリートによる船だまりが各地で作られました。現在アサザが咲いているのは、「保全」と称して作られたところも含め、船だまりや消波堤が作られているところです。即ち、霞ヶ浦人工湖岸化が本来の霞ヶ浦には無かった波あたりの弱いニッチェを作り出し、80年代に爆発的に増えたのがアサザだったということだと思います。
今回の調査で、保全事業などしていないのにアサザが勝手に入り込んで広がっている場所を新たにいくつか確認しました。その一例が麻生漁港です。アサザだけでなく、特定外来生物ミズヒマワリも入り込んでいます。今回の調査で、西岸のアサザ繁茂地は例外なくミズヒマワリも入っていました。本来の波が高い霞ヶ浦ではあり得なかったことです。

下の写真は麻生漁港アサザ繁茂地の遠景です。陸上からはセイタカアワダチソウが入り込んでいることが分かります。かつてアサザ保全と称して粗朶消波堤が設置された地区も、今では同様の光景を呈しています。アサザセイタカアワダチソウも美しい黄色ですね。

見た目だけでいい加減な保全事業を進めてきた結果が、今の惨憺たる霞ヶ浦だと思います。この事業を進めて来た有識者達が改心しない限り、霞ヶ浦生態系だけでなく、平野部の湖沼生態系の受難は続くでしょう。

アサザ基金によって環境破壊された霞ヶ浦湖岸

アサザ基金がホームページなどで「自然が再生した」と宣伝していた霞ヶ浦境島地区です。ここは見事な砂浜が広がっていたのですが、客土と粗朶消波堤の造成が行われました。
その結果、外来種がはびこることになりました。下の写真は2010年10月の境島地区です。秋に行けば「自然再生」ではなく、セイタカアワダチソウなどの外来種が侵入した荒れ地を作っただけだと分かります。消波堤の内側は有機汚濁が進行した為か、アサザを植えても育たなくなりました。それでも外来種に覆われているとバレにくい春に子供も含めて人を連れてきては、手前に見える池にアサザを植えさせていました。

その頃の池の様子です。

昨年行った時は、この池も放棄されていました(2011年8月14日付記事)。そして今では、子供が湖岸に近づけないほど完全に藪化し、消波堤や札などがうち捨てられたままになっています。池もわずかに残っていますが、アサザは全くありませんでした。

アサザ基金はこういった事態になっていることをひた隠しにして別の地区で、寄付してくれる企業にアサザを植えさせているようです。下の写真の看板では「アサザを植えました」とは書かれていませんが、アサザの絵が見えます。それがよいことだと信じている企業の方々が、アサザ植栽が自然再生にも水質浄化にもならないことを知るのは、その場所が境島や根田のように、消波堤内がアサザ枯死体で汚濁してしまった時なのでしょうか。

アサザ基金がしてきた事は湖岸環境の破壊であることは事実が物語っているのに、今だにアサザ植栽事業によって寄付を受けているのだとしたら、それは詐欺行為だと私は思います。

(追伸)八郎湖に詳しい知人に尋ねたところ、八郎湖に造られた粗朶消波堤は、短期間で粗朶が抜けて破損してしまったそうです。霞ヶ浦のような漁業被害や景観の悪化が生じていなければよいのですが。。。

アサザ基金のデタラメ環境教育

秋田県のホームページに「霞ヶ浦アサザプロジェクト出前授業イン・ハチロウキッズ 秋田県昭和町立大久保小学校における総合的な学習(環境学習)」が紹介されていました。
http://www.pref.akita.lg.jp/www/contents/1132105914938/index.html

この飯島氏の話を聞いた子供達は、粗朶消波堤を造って波あたりを弱くしたら八郎湖でも「霞ヶ浦のように」水草が復活して、そうなればアオコもなくなる、と考えてしまうでしょう。
事実は、霞ヶ浦では粗朶消波堤から流れ出た粗朶で岸がゴミの山になり、漁業被害が出ました。

河川環境総合研究所報告第11号、87ページより)

波あたりを弱くしたために湖底はヘドロ化し、アサザを植えても根付かなくなりました。

アサザ基金が植栽を行っていた根田地区の消波堤岸側。2008年以降、植栽しても育たなくなった)

そして霞ヶ浦では今でもアオコが発生しています。

(2012年8月の状態)
霞ヶ浦のこういった現状を知りながら、「霞ヶ浦の小学校では、アサザを育て、増えた水草を湖に植えに行ってます。そしたら霞ヶ浦の自然はだんだん良くなってきた。」などと話しています。

「沈水植物が繁茂する浅い湖沼は透明度が高い(=植物プランクトンが少ない)」とのSchefferの主張は仮説に過ぎません。そして宍道湖では沈水植物復活と同時に、アオコが頻発するようになりました。

(沈水植物とアオコが同時に繁茂している宍道湖湖岸。2012年8月)

水草は根から栄養をとりますから、富栄養状態の湖沼で水草が増えても、植物プランクトンと栄養の取り合いになりません。
ちなみに宍道湖の沈水植物が復活したところはコンクリートの堤防で囲まれていますし、消波施設も設置されていません。宍道湖はとても波が高い湖沼です。波当たりを弱めなくても、流入する除草剤が減れば沈水植物は復活することを、宍道湖の例が示していると考えています。
干拓前の八郎潟は日本で第2の面積の大きな湖で、漁獲や採草によって栄養が除去されていました。その水面を干拓して排水が生じる農地にし、さらには淡水化によって海水との交換を悪くしたこと、つまり負荷と閉鎖性の増大が水質悪化の主因でしょう。子供達に説明するのが難しい事かもしれませんが、分かりやすいからと言ってホラ話を教育するなど、言語道断です!

このデタラメ教育が行われたのは2006年と思われます。八郎湖では昨年、粗朶消波堤が造られていました。子供達から大人にデタラメが伝わったのかもしれません。
http://www.pref.akita.lg.jp/www/contents/1252981416825/index.html
お気の毒ですが、粗朶消波堤を作り水草を植えることが原因でアオコが減ることはありません。もしかしたら数年後に1年か2年、アオコが出ない年があるかもしれませんが、それは水温が上がらなかったなど別の原因によるものでしょう。厳しい自治体財政の中、人々の善意と税金が無駄に使われたことに、心底、憤りを感じます。全てはアサザ基金が原因でしょう。

お知り合いに秋田県の理科教育、環境教育に携わっている方がおられましたら、このブログの「アサザ基金の欺瞞」を参照するよう伝えて下さい。
霞ヶ浦では、アサザ基金の欺瞞である「粗朶消波堤」で、どれほど貴重な湖岸環境が失われたか。被害に遭うのは八郎湖で最後になって欲しいと思います。

湖の放射線汚染の防止は陸上の除線から〜アサザ基金の奇妙な主張

昨日は手賀沼親水広場で会議がありました。敷地では芝生の除線作業が行われていました。

環境省の湖心堆積物調査では、1kg乾泥あたり放射性セシウム濃度が霞ヶ浦で178ベクレルであったのに対し、牛久沼は1170ベクレル、手賀沼は上流川中央で7600ベクレル、下流川中央で1540ベクレルでした。
(出典:http://www.env.go.jp/jishin/monitoring/result_pw130207-1.pdf

こういう状況でアサザ基金は、霞ヶ浦では河川堆積物のモニタリングが不足している、霞ヶ浦では水位操作により放射性セシウムがたまっていると、国や県を批判しています。例えば下記リンクに、アサザ基金の主張が図入りで解説されています。
http://www.kasumigaura.net/asaza/03activity/01lake/save/121208sinpo_iijima.pdf

モニタリング地点は多い方がよいのでしょうが、限られた予算で何を優先するかを考えれば、まず陸上の除線でしょう。手賀沼霞ヶ浦よりはるかに汚染が深刻ですが、「もっと多くの河川で調べろ」なんて主張は聞いたことがありません(たとえあっても極めてマイナーでしょう)。

霞ヶ浦では水位操作により放射性セシウムがたまりやすくなっているとアサザ基金は主張していますが、では逆に水門をあければ湖心に放射性セシウムが堆積しないのでしょうか。そうではないことが、手賀沼の方が霞ヶ浦よりはるかに高いことから分かります。陸上にどれだけ降ったか、それをどれだけ除去できるかで、湖への蓄積が左右されます(これについては自ら放射線を測って、学術論文を投稿しました)。

正直、私にはアサザ基金は不安を煽っているようにしか見えません。霞ヶ浦湖水を原水とする水道水にセシウムが検出される可能性が極めて低いことは、住民の皆様も了解されていると思います。漁業の為であれば、アサザ基金がやっていることは逆に、不安を煽ることで禍根を残すのではないでしょうか。第一、アサザ基金の代表は霞ヶ浦よりはるかに高い濃度の牛久沼のそばにお住まいで、牛久沼でも漁業が行われているのに、何も発言しないのはなぜでしょう。
彼にとって「地元である牛久沼はどうなってもいいから、霞ヶ浦は救いたい!」という崇高な理想があるのでしたら、実際に霞ヶ浦の汚染が減るよう、例えば除線を急ぐよう東電に働きかけるなど、不安材料が現実に減るような提案をしていただきたいと、霞ヶ浦からの水を飲んでいる私は思います。

(追伸)
放射線の専門家の方や手賀沼周辺にお住まいの方には、なぜ私が今さらこういう指摘をせねばならないのか、不思議に思うかもしれません。
かつて「アサザを植えて水質がよくなるなど、あり得ない」(2010年8月12日記事参照)ことが住民には分かっていたのに、小学校は子供達にアサザを植えると水質浄化すると教育し、今では「アサザは水質を浄化する」という誤解が義務教育の副読本に書かれるまでになりました(2012年4月1日記事参照)。
こうなった背景のひとつが、環境の専門家と目されていた鷲谷いずみ東大教授が「アサザは虫が食べるから水質浄化になる」と一般書アサザ基金の非科学的な主張を弁護する内容を書いたことです。動物に食べられてそれが系外に出ることが浄化であれば、植物プランクトンは漁獲対象種が直接・間接に食べて漁獲により系外に出て行くのですから、「植物プランクトンが増えることは水質浄化」という、わけの分からないことになってしまいます(水質浄化とは、具体的には植物プランクトン(=有機物)が減ることを指します)。
私は同じ東大の理学部出身の女性教授が不正確な発言を繰り返してこういう事態を招いたことは、将来、女性科学者に対する不信を招かないかと過度かもしれませんが心配していて、何とかしてこの弊害を少なくせねばと思っています。
そして放射線についても、科学的な知見を欠く東大教授がまた現れてアサザ基金を弁護する兆しがあるので、誤解が広まるのは防ぎたいと思い、今日の記事を書きました。

アサザ基金に関する学会での議論

9月11日14日の記事で、NPO法人アサザ基金の問題点を水環境学会シンポジウムで報告したことをご紹介しました。そのシンポジウム全体の報告が、水環境学会誌12月号に掲載されました。下記からダウンロードできます。
水環境学会誌シンポジウム報告.pdf 直
NPO法人アサザ基金は「山室氏に関するコンプライアンス事案を調査していた調査委員会の報告書により、新たな事実が明らかに」と題する文書などで「科学的な議論」について意見を表明していますが、水環境について科学的に議論する場でどういう判断が下されているかは、水環境学会誌に書かれている通りです。
ご参考にされてください。

アサザ植栽、その根拠の怪しさ

霞ヶ浦アサザ調査に行ってきました。
下の写真はアサザ基金が現在でも植栽をしている霞ヶ浦西浦の一画です。ここではアサザが過去に生えていた記録がないそうです。アサザ基金は「系統保存した株しか植えていない」とホームページに書いているのですが、もともとアサザが無かったところに一体どういう株を植えているのか不明です(遺伝子解析用にサンプリングしたので、今年度末にはどの系統を植えているのか分かります)。沖合に木製の消波堤が見えます。

霞ヶ浦西浦の、別の一画です。アサザが自然に繁茂していました。8月の調査で見落としたのは、ここまで広がっていなかったからだと思います。わずか2ヶ月少々でのアサザのこの広がり方は、特に速いわけではありません。琵琶湖近くの水路では、毎月のように除去してもすぐに広がるそうです。また霞ヶ浦の他の場所でも自然にアサザが定着したところを見ていますが、みるみる、という感じで広がっていきます。アサザ基金はホームページに「アサザの株が広がるには長年かかる」と書いていますが、アサザの生息場所として適さないところに無理矢理植えているからではないでしょうか。

沖合には国土交通省が波浪対策として設置した消波堤が見えています。「石積み消波堤は水を通さないから環境を悪化する」とアサザ基金は主張していますが、アサザが一時的に繁茂するという観点からは、粗朶でも石積みでも変わらないことがよく分かります。しかも、ここでは自然にアサザが生えてきたのです。

今回の調査は、アサザに詳しい専門家お二人に同行いただきました。「霞ヶ浦本体にアサザを植えることがアサザ保全になるとは思えない」「植えるなら水路に植えて、植えっぱなしではなくて定期的にどぶさらいもして、水草がどういう環境で個体群を維持するのか学べるようにしてはどうか」という点で、お二人とも見解は共通していました。

サンデー毎日の報道について

サンデー毎日」(平成24年7月15日号)は「東大教授が東大話法で“大暴走”」と題した記事を掲載しました。安富東大教授と飯島アサザ基金代表理事が、この記事を根拠に私を批判しています。ですので、この記事が事実無根であれば、彼らの批判は根拠を失うことになります。

当該記事2ページ最上段の4行目には「当の山室教授は東大転身後、国交省天下り組が理事長を務める財団法人「河川環境管理財団」から、少なくとも05、06、10、11年度に助成(金額は不明)を受けている。同時に国交省茨城県から多額の事業委託を受ける「霞ヶ浦市民協会」の会員だったこともある(現在は退会)。」と書かれていて、最下段6行目には「山室教授は国交省の責任は追及していない。」とあります。これだけだと読者は、私が国土交通省助成金を受けているから国土交通省の責任は批判していないのだと思うでしょう。実は「山室教授は国交省の責任は追及していない。」は事実無根で、私は国土交通省の責任を追及していて、その事実を記者に伝えました。記者からの質問とそれに対する私の回答は下記PDFに記されています。
追加の質問回答.pdf 直
そこにもありますように、NPO法人アサザ基金はホームページで、「国交省天下り組が理事長を務める」財団法人河川環境管理財団の報告書を引用して、粗朶消波施設の妥当性を主張しています。このことからNPO法人アサザ基金は河川環境管理財団について、例えば国土交通省の利益や見方を代弁することなく、科学的に中立の立場で運営されていると判断していると考えられます。私も同様に考えています。

余談ですが、この記事を読んで私の知人は爆笑していました。私は20代から農水省による宍道湖・中海干拓淡水化事業に対して反対し、霞ヶ浦についても国交省による浚渫事業に対して批判記事を書いています(山室真澄(2006) [総説] 浚渫が水環境に及ぼす影響.海洋理工学会誌 Vol.12,No.2,59-63(2007年5月発行))。私を知っている方から見たら、私を御用学者に奉ろうとするこの記事は荒唐無稽なのです。

当該記事2ページ下から2段目の10行「粗朶ではヘドロ化しないことが調査で分かっている」との飯島氏の発言が非科学的であることは7月22日付記事で指摘しました。

当該記事最下段最後から6行目「事実確認や討論など同基金との直接対話は一切ないという。「科学的に批判する作法すらわきまえていない」(飯島氏)。」も事実無根で、2010年10月6日にメールで質問いたしました。送信エラーはでていませんから届いていると思います。さらには2010年10月6日付記事で、「なおこの質問は下記のブログで公開しています。お返事も公開することで公平を期すつもりですので、ご回答よろしくお願い申し上げます。」と明記しており、私のブログ記事について批判を重ねているアサザ基金が読んでいないはずはないと思います。本日まで一切回答をいただけていません。

こういったデタラメ記事を根拠に批判している方々こそ、「東大話法 −欺瞞の言語」を操っているように私には見えます。

本当に霞ヶ浦流域のアサザを保全したいのなら(2)

23日は琵琶湖で10年以上確認されているアサザを見に行きました。私のこれまでの記事を読んでおられる方ならおわかりのように、当然ながら、波あたりが強い琵琶湖の中ではなく、流入する水路に生えていました。
ちょうど通りかかった農家の方に聞いたところ、今月になって、水路の「どぶさらえ」をしたばかりとのことでした。農業指導の方が来る前に水草を除去しておかねばならないそうです。確かに、「どぶさらえ」にあったアサザが畝につまれていました。乾燥してもなおたくましく生きています。

除去直後の水路でも、アサザはこれだけまた増えています(逆にどぶさらえしないと、有機物が過剰になってアサザは消えると思います)。また、写真でおわかりのように、アサザは水質的には相当ひどい状態(油まみれ、ゴミまみれ)でも生きていけて、成長速度は非常に高いのです。

私が霞ヶ浦でのアサザ植栽を批判していることについて、絶滅危急種の保全という点からはアサザ基金がやっていることに意義があるのでは、という意見をいただくことがあります。アサザ保全すべきという点ではその通りで、だからこそ私はアサザ基金のやり方を批判しています。彼らがやっていることは、アサザ保全になっていないのです。
各地のアサザの状況、そして霞ヶ浦での聞き取りから、アサザ基金が植栽を繰り返していたところは短期的にアサザがいたことはあっても、定常的に住みやすい環境ではありませんでした。だから消えたのです。それを水位操作や護岸工事とか、証拠もなく公共工事が原因と決めつけ、本来の生息環境とはどういうところかを検討するという、保全を考える上での基本を怠ったのがアサザ基金の活動です。彼らは保全とはほど遠い煽動に子供達を巻き込んで、本来は二枚貝がいた砂地にアサザを無理矢理植えさせるなど、環境破壊に荷担させたと言えます。
アサザ植栽事業による底質変化については既に発表しましたが、秋の学会では生態系がどう変わったかについて発表する予定です)

本当に霞ヶ浦流域のアサザを保全したいのなら

関西で10年以上繁茂しているアサザ生息地を見てきました。
下の写真は大阪府の都市河川にある群落です。

これは和歌山県の住宅地前の水路です。水深は10cm未満、排水口の前。それでも10年以上アサザ群落があります。

そしてこちらは、京都府の、最近アサザが入ってきた田んぼの排水路。ここも水深は10cm未満。上記の水路同様、泥地でしたが、どちらも霞ヶ浦の根田(アサザ基金が植栽を繰り返した地域)のような硫化物臭はしませんでした。とても浅いので、酸欠にならないのだと思います。

アサザという植物は、水路ではかくも強いのです。なのにアサザはなぜ減ったのか。アサザという植物の理解は、そこから始めるべきでしょう。

そしてアサザ基金が現在の霞ヶ浦流域で本当にアサザ保全したいのなら、子供達に植栽させる前に、霞ヶ浦で10年以上存続する群落はどういう環境にあるのかに学ぶべきではないでしょうか。どういうところがアサザに適しているのか解明してもいないのに、子供達に植栽させる意義は何なのでしょう?

霞ヶ浦アサザが衰退した原因は、波あたりではありません。なぜなら、10年以上アサザ群落が存続している和田岬も麻生も、波あたりが強いからです。そして水位操作が植栽失敗の原因でもありません。なぜなら同じ霞ヶ浦で、両所ともアサザは生きているのです。

私は北陸から関西まで広くアサザを見てきた上で、霞ヶ浦アサザは本来どういうところにいたと考えられるのか、ブログで書いてきました。そして念のために水生植物の保全を研究している専門家にも確認してきました。アサザ基金がやっていることは専門家の誰一人として、自然再生でも、絶滅危急種の保全にもならないと明言されているのです。